給与・手取り

訪問看護師の年収・手取り・働き方
病棟との違い・オンコール手当・開業の道

2026年6月19日 更新 / メディカルマネー編集部 / 監修:黒田律(内科医・産業医) / 中級者向け

「訪問看護師は給料が高い」という話を聞いたことがある人は多いと思います。実際のところ、訪問看護師の年収は病棟看護師と大きくは変わりません。それでも「高い」と言われるのは、夜勤がないのに病棟とほぼ同じ年収になりやすいからです。同じ収入でも、働き方の負担がまったく違うのです。

この記事では、厚生労働省「賃金構造基本統計調査」(令和6年)の看護師データを土台に、訪問看護師の収入の考え方を整理します。あわせて、訪問看護ならではのオンコール(待機)手当の相場、訪問件数や直行直帰といった働き方、そして管理者・訪問看護ステーション開設という年収を伸ばす道、24時間対応体制加算など制度が給与に与える影響までを通しで解説します。

この記事の結論

訪問看護師の年収はおおむね400〜550万円が目安で、病棟看護師(夜勤あり)とほぼ同水準。夜勤がない分、オンコール手当が収入の上乗せ要素になります。さらに伸ばすなら管理者や独立(ステーション開設)が現実的な道です。なお、これらは「額面」で、手取りは社会保険・税で引かれた約8割。手取りシミュレーターで自分の数字を確認できます。

そもそも訪問看護師の年収はいくら?

まず前提として、「訪問看護師」専用の年収統計区分は乏しいのが実情です。厚生労働省の賃金構造基本統計調査では「看護師」「准看護師」といった資格区分での集計はありますが、「訪問看護師」という働き方を切り出した公的な平均年収は整備されていません。そのため、ここでは看護師全体の公的統計をベースに、求人水準や介護分野のデータを重ねた「目安」として示します。断定的な金額ではない点を理解しておいてください。

その看護師全体について、厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査」では、看護師のきまって支給する現金給与額は月約36.3万円、年間賞与その他特別給与額は約83.5万円で、これらから計算した平均年収はおおむね519.7万円です(全国・企業規模計・男女計)。これが「看護師」という資格全体の出発点になります。

訪問看護師の場合、求人水準や事業者データを見ると、正社員(常勤)の月収はおおむね37万円前後で、病棟看護師(約39万円前後)と比べて差は1〜2万円程度というのが多くの調査の見立てです。年収レンジにすると、おおむね400〜550万円が一つの目安になります。経験・地域・ステーションの規模、後述するオンコールの回数で大きく上下します。

区分月収の目安年収の目安備考
看護師全体(公的統計)約36.3万円約519.7万円令和6年・賃金構造基本統計調査
病棟看護師(夜勤あり)約39万円前後約450〜550万円夜勤手当が年収を押し上げる
訪問看護師(常勤・目安)約37万円前後約400〜550万円夜勤なし。オンコール手当で上乗せ

※訪問看護師は専用の統計区分が乏しく、看護師全体の公的統計に求人・事業者データを重ねた目安です。地域・経験・規模・オンコール回数で大きく変わります。

💡「高い」のは金額ではなく"コスパ"

訪問看護師の年収が病棟とほぼ同じなら、なぜ「高い」と言われるのか。答えは夜勤がないことです。病棟看護師の年収は夜勤手当でかさ上げされている部分が大きく、夜勤を外すと年収はぐっと下がります。一方、訪問看護は日勤中心でほぼ同じ年収に届く。つまり「同じ金額をより穏やかな働き方で得られる」という意味でコスパが良い、というのが実態に近い理解です。

病棟看護師との収入比較|夜勤手当とオンコール手当

収入の中身を見ると、病棟と訪問看護では「上乗せの源泉」が違います。病棟看護師は夜勤手当が年収を大きく左右します。月4〜5回の夜勤で、夜勤手当だけで年60万〜90万円程度になることも珍しくありません。これが「夜勤がきついけど稼げる」と言われる理由です。

対して訪問看護師は、基本的に日勤の訪問業務が中心で夜勤はありません。その代わりに収入の上乗せになるのがオンコール(待機)手当です。利用者や家族からの夜間・休日の電話に備えて待機し、必要なら緊急訪問する役割への手当です。夜勤ほどのインパクトはないものの、回数次第ではまとまった金額になります。

夜勤の有無は、お金だけでなく生活リズム・体への負担に直結します。看護師の働き方全体を俯瞰したうえで訪問看護を位置づけたい人は、看護師の働き方とお金もあわせて読むと、夜勤あり/なしの収入トレードオフがつかみやすくなります。

オンコール(待機)手当の相場

訪問看護師の収入を語るうえで欠かせないのがオンコール手当です。全国訪問看護事業協会の調査をもとにすると、待機1回あたりの手当は1,000〜3,000円が相場で、内訳は「1,000〜2,000円未満」が34.2%、「2,000〜3,000円未満」が31.0%と、この帯に多くが集中しています。

待機していて実際に呼び出され、緊急訪問した場合は、待機手当とは別に出動手当が支払われるのが一般的です。1回あたり3,000〜5,000円以上が支払われるケースもあり、深夜帯はさらに上乗せされることもあります。「待機しているだけ」と「実際に動いた」で手当が分かれている、と覚えておくとよいでしょう。

項目相場の目安内容
オンコール待機手当(1回)約1,000〜3,000円電話対応に備えて待機する手当
緊急出動手当(1回)約3,000〜5,000円以上実際に呼ばれて緊急訪問したとき
オンコール回数(月)小規模で月10回前後もスタッフ数が少ないほど回数が増える

出典:全国訪問看護事業協会「訪問看護ステーションにおける24時間対応体制に関する調査研究事業 報告書」(https://www.zenhokan.or.jp/)ほか求人水準。金額・回数はステーションにより異なります。

オンコール手当は「拘束の対価」。回数と負担をセットで見る

オンコール手当は収入の上乗せになりますが、待機中は飲酒や遠出ができず、夜間に呼び出されれば睡眠も削られます。スタッフ数が少ないステーションほど一人あたりの当番回数が増えるのが構造的な注意点です。求人で「オンコール手当◯円」と見たら、必ず「月に何回くらいか」「2人体制か」までセットで確認しましょう。月額にすると数万円の差になります。

訪問件数・直行直帰という働き方

訪問看護師の働き方の特徴は、1日に複数の利用者宅を回ること、そして事業所によっては直行直帰が認められることです。1日の訪問件数はおおむね4〜6件が目安で、件数や移動効率によって日々の業務密度が変わります。歩合(インセンティブ)として訪問件数に応じた手当を設けているステーションもあり、その場合は件数が直接収入に反映されます。

直行直帰は、自宅から最初の利用者宅へ直接向かい、最後の訪問先から直接帰宅する働き方です。通勤時間や事業所での待機が減り、子育てや家庭との両立がしやすくなる一方、移動・記録の自己管理が求められます。日勤中心・オンコールの回数を調整できる事業所を選べば、ライフステージに合わせた働き方がしやすいのも訪問看護の強みです。

💡収入は「基本給+訪問件数手当+オンコール手当」の合算で見る

訪問看護師の月収は、基本給だけでなく、訪問件数に応じた手当やオンコール手当を足した合算で決まることが多いです。求人票の「月収◯万円」が、何件・何回の前提で計算されているかを確認しないと、入職後に「思ったより少ない/多い」とズレが生じます。額面の内訳を分解して見る癖をつけましょう。

管理者・ステーション開設という年収アップの道

訪問看護師がさらに年収を伸ばす現実的なルートが、管理者になること、そして訪問看護ステーションを開設(独立)することです。

管理者(管理者手当)

訪問看護ステーションには、人員配置上、常勤の管理者を1名置くことが定められています。管理者は原則として保健師または看護師でなければならず、就任すると管理者手当が付き、年収が一段上がるのが一般的です。スタッフのマネジメント、加算の管理、関係機関との調整など業務の幅は広がりますが、その分処遇に反映されやすいポジションです。

訪問看護ステーションの開設(独立・開業)

もう一段先が、自らステーションを開設する道です。開設には主に次の要件があります。

  • 法人格が必要(個人開業ではなく法人として設立する)。
  • 看護職員(保健師・看護師・准看護師)を常勤換算で2.5人以上配置する(うち1名は常勤)。
  • 管理者として常勤の保健師または看護師を1名置く(管理業務に支障がなければ看護職員との兼務も可)。
  • 「人員」「設備」「運営」の3基準を満たし、都道府県知事等の指定を受ける。

うまく軌道に乗れば、勤務看護師より大きな収入が見込める一方、人材確保・収支管理・制度対応など事業リスクも背負います。開業はお金の計画が肝心です。資金繰りや法人化の考え方そのものは、クリニック開業の資金計画の発想が参考になります(業態は違いますが、初期投資・運転資金・損益分岐の考え方は共通です)。

管理者就任や独立で年収が変わると、税・社会保険の引かれ方も変わります。まずは今の手取りを正確に把握しておきましょう → 手取りを計算 →

制度が給与に与える影響|24時間対応体制加算など

訪問看護の収入は、診療報酬・介護報酬という制度の設計に強く影響されます。代表例が、夜間・休日も対応できる体制への加算です。

医療保険の24時間対応体制加算は、2024年度(令和6年度)の報酬改定で、看護職員の負担軽減策に取り組むステーションを高く評価する形に再編されました。負担軽減の取り組みがある場合(イ)と、そうでない場合(ロ)で点数が分かれ、月1回算定できます。介護保険側にも、緊急時の訪問体制を評価する緊急時訪問看護加算があります。

こうした加算は事業所の収入源であり、めぐりめぐって看護師の処遇(オンコール手当・基本給)の原資にもなります。逆に言えば、加算を取れている(=経営が安定している)ステーションほど、手当も整備されやすい傾向があります。求人を見るときに「24時間対応体制をとっているか」を確認すると、収入と働き方の両面で事業所の体力が読み取れます。

制度(加算)区分給与への影響
24時間対応体制加算医療保険・月1回夜間休日体制の評価。オンコール手当の原資に
緊急時訪問看護加算介護保険緊急訪問の体制を評価。出動手当の背景に
各種ベースアップ・処遇改善診療報酬賃上げの原資。基本給・手当に反映され得る

出典:厚生労働省 令和6年度診療報酬改定(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000188411_00043.html)。具体的な点数・要件は告示・通知をご確認ください。

需要拡大の背景|在宅医療シフト

訪問看護の仕事が安定し、年収が上がりやすいと言われる根っこには、在宅医療への政策的シフトがあります。高齢化が進み、「病院から在宅へ」という流れのなかで、訪問看護の役割は年々大きくなっています。

事業所の数もそれを裏づけています。全国訪問看護事業協会の調査では、訪問看護ステーション数は令和7年で18,753ヶ所に達し、前年から約8%増加。集計が始まった2010年以降、15年で3倍以上に増えました。働き手のニーズが構造的に強い分野であり、当面は需要が縮む心配が小さいのが、収入の安定につながっています。

額面と手取りは別物|引かれる約2割を忘れない

ここまでの年収はすべて「額面」です。実際に口座に入る手取りは、ここから社会保険料(健康保険・厚生年金・雇用保険、40歳以上は介護保険も)と税金(所得税・住民税)が引かれた金額になります。結果として、手取りは額面のおおむね75〜80%に落ち着きます。「ざっくり8割」と覚えておくと見積もりが速くなります。

とくに訪問看護はオンコール手当・出動手当・件数手当など変動部分が多いため、月によって手取りが変わりやすいのも特徴です。月収が高い月は社会保険料・所得税も増えるため、額面が増えた分そのまま手取りになるわけではありません。年収を比べるときは、必ず手取りベースで考えましょう。

求人の「高月収」はオンコール込みのことがある

訪問看護の求人で目を引く「月収◯万円」は、オンコール手当や件数手当をフルに見込んだ最大値のことがあります。待機回数が少ない月や、入職直後で件数が伸びない時期は、その金額に届かないこともあります。基本給がいくらで、変動手当がいくら乗る前提なのかを分解し、手取りで現実的に見積もるのが後悔しないコツです。

年収を上げる方法は看護師共通の軸で考える

訪問看護師の年収アップは、結局のところ看護師全体に共通する考え方に通じます。(1)働く場所・事業所を選ぶ・変える、(2)役職(管理者)に就く、(3)条件を整えて転職するの3つが軸です。訪問看護の場合は、これにオンコールの回数や件数手当という変動要素が加わります。

具体的な手順は看護師の年収を上げる5つの方法で整理しています。職場が変われば年収レンジそのものが動くこと、手当の付き方が事業所で違うことなど、訪問看護にもそのまま当てはまる考え方が詰まっています。転職を検討するなら、提示年収の高さではなく「手取りと総合条件」で比べるのが鉄則です。中立な比較の視点は転職サイトの選び方も参考にしてください。

まとめ

  • 訪問看護師の年収はおおむね400〜550万円が目安。専用統計は乏しく、看護師全体(令和6年・約519.7万円)+求人水準からの目安。
  • 病棟看護師とほぼ同水準だが夜勤がないのが最大の違い。「同じ年収を穏やかな働き方で」が訪問看護の魅力。
  • 収入の上乗せはオンコール手当(待機1回約1,000〜3,000円+出動手当)。回数・体制とセットで見る。
  • 年収を伸ばす道は管理者・ステーション開設(法人格・常勤換算2.5人以上・管理者は保健師/看護師)
  • 24時間対応体制加算など制度が手当の原資。在宅医療シフトで需要は構造的に拡大中。
  • 額面と手取りは別物。手取りは約8割。変動手当が多い分、手取りベースで比べる。

職場別・条件別の平均はあくまで出発点です。手取りシミュレーターに自分の数字を入れて、「実際にいくら残るのか」を確かめるところから始めてみてください。


本記事の年収は厚生労働省「賃金構造基本統計調査」(令和6年)の看護師データに、訪問看護分野の求人・事業者データを重ねた全国の目安レンジで、2026年(令和8年)の税・社会保険制度にもとづく一般的な情報です。訪問看護師は専用の統計区分が乏しいため、金額は目安であり断定ではありません。実際の給与・手取り・手当・加算は勤務先や個々の状況、制度改定で異なります。本記事は税務・労務・投資の個別助言ではありません。正確な金額や最新の制度は、勤務先・一次情報(厚生労働省・全国訪問看護事業協会等)・専門家にご確認ください。

監修・運営:黒田 律(くろだ りつ)

内科医・産業医(医師8年目)/投資家

地方の病院で内科診療を続けながら、産業医として「働く人の心身とお金」に向き合う医師。記事は税・制度などを公的な一次情報で確認し、医療・制度面を監修しています。運営者・編集方針について →