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救急救命士になるには|消防ルートと養成校ルート・国家試験・費用

2026年6月19日 更新 / メディカルマネー編集部 / 監修:黒田律(内科医・産業医) / 初級者向け

この記事のゴール

救急救命士になるための2大ルート(①消防官になってから取る/②養成校で取ってから就職する)の違いを理解し、受験資格・国家試験の合格率・学費・取得後の年収までを「お金軸」でつかめるようにします。やりがいの大きい仕事ですが、就職先や働き方によって収入・身分の差が大きいのが実態です。煽らず、難易度と費用の現実も正直に整理します。

救急救命士とはどんな資格か

救急救命士は、救急車などの搬送途上で、医師の指示のもとに心肺停止傷病者への気道確保・静脈路確保・薬剤投与などの救急救命処置を行える国家資格です。1991年(平成3年)の救急救命士法でできた資格で、根拠法令に基づき業務が定められています。働く場所の中心は今も消防(地方公務員としての救急隊)です。2021年の法改正で医療機関内(院内救命士)でも一定の処置が可能になり、病院・民間救急・ドクターカー・イベント救護などにも広がってはいますが、これらは件数・待遇とも限定的で、安定雇用や好待遇が保証されるわけではありません。「消防以外でも食べていける」と早合点しないことが大切です。

もう一つ重要なのは、「救急救命士の資格」と「消防官という身分」は別物だという点です。資格を取っても自動的に消防に就職できるわけではなく、別途消防官(公務員)採用試験に合格する必要があります。ここを取り違えると進路設計を誤ります。

救急救命士になる2大ルート

救急救命士になる道は、大きく次の2つに分かれます。順番(資格が先か、就職が先か)が逆になるイメージです。

項目①消防ルート(消防官→養成所)②養成校ルート(学校→就職)
流れ消防官採用試験に合格→救急隊として勤務→本部の推薦・派遣で養成所へ→受験資格→国家試験大学・専門学校(救急救命士養成課程)で学ぶ→在学中に国家試験→卒業後に就職
主な対象高卒・大卒で公務員試験を受ける人、社会人高校生・浪人生・他分野からの進学者
資格取得までの期間(目安)採用後、救急業務に従事して数年+養成所で原則1年以上(短縮課程は6か月以上)専門学校2〜3年/大学4年
学費(目安)養成所の学費はほぼ不要(公費・給与をもらいながら)。ただし派遣されるまでに年単位の現場勤務と本部の選抜がある専門2〜3年で約250万〜450万円、大学4年で約500万〜800万円(私立はこれを超える例も)
就職の確実性すでに消防官なので雇用は安定資格取得後に消防/病院/民間へ就職活動が必要
💡どちらが向く?

「確実に消防で働きたい・在学中の学費を抑えたい」なら①消防ルート、「比較的短く資格を取り、消防以外(病院・民間)も視野に入れたい」なら②養成校ルートが基本です。ただし①は消防官になること自体がハードルで、しかも全員が希望時に養成所へ行けるわけではありません。②は資格を取っても採用試験は別、という裏返しの難しさがあります。

ルート①:消防官になってから取得する

まず消防官採用試験(市町村・東京消防庁などの公務員試験)に合格し、消防官として採用されます。採用後は消防学校での研修を経て現場へ。その後、救急隊員として5年以上(救急業務に従事した時間が2,000時間に達したときはその期間)従事し、所定の講習を修了したうえで、知事等が指定する救急救命士養成所で原則1年以上(救急救命士法施行規則に定める一定の課程に限り6か月以上)の課程を修めると、国家試験の受験資格が得られます(救急救命士法第34条)。

このルートは給与をもらいながら(養成所の学費負担なく)資格を取れるのが最大の利点です。一方で、入口の消防官採用試験は自治体によって倍率が高く、採用後すぐ救急救命士になれるわけではありません。養成所へ派遣されるのは所属消防本部の推薦・派遣枠を得られた人に限られ、そこに至るまで年単位の現場勤務と本部内の選抜があります。「お金はかからないが時間と機会のコストがかかる」ルートだと理解しておきましょう。

出典:救急救命士法 第34条・救急救命士法施行規則(e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/403AC0000000036 )、一般財団法人日本救急医療財団「救急救命士国家試験」(https://qqzaidan.jp/siken/ )

ルート②:養成校(大学・専門学校)で取得する

高校卒業後、文部科学大臣指定の学校または都道府県知事指定の救急救命士養成所で必要な知識・技能を修得すると受験資格が得られます。法令上の修業年限は原則2年以上ですが、大学等で所定の医学関連科目をすでに履修した人は1年以上の短縮ルートもあります(救急救命士法第34条)。実際のカリキュラムは専門学校で2〜3年、大学で4年が中心です。在学中に国家試験を受け、合格後は消防官採用試験を受けて消防へ進むのが王道ですが、病院・民間救急・警備/イベント救護会社などへ就職する人もいます。

「資格=就職」ではない

養成校ルートで国家試験に受かっても、消防で働くには別途消防官採用試験に合格しなければなりません。採用に至らなかった場合に備え、病院・民間という選択肢のほか、受験年齢の上限(多くの自治体で設定)も早めに確認しておきましょう。

国家試験の受験資格・合格率

救急救命士国家試験は年1回・例年3月上旬に実施されます。直近の第48回(令和7年/2025年3月9日実施)の結果は次のとおりで、合格率は94.4%(確定値)です。これは養成課程をきちんと修了した人が受ける試験であるためで、「誰でも受かる」という意味ではありません。

第48回(2025年)人数・割合
出願者数3,476人
受験者数3,436人
合格者数3,242人(男2,924・女318)
合格率94.4%(確定値)
合格基準必修問題44.0点以上/55.0点 かつ 通常問題132.0点以上/220.0点

出典:厚生労働省「第48回救急救命士国家試験の合格発表」2025年(https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000200942_00007.html)

合格率より手前の関門に注意

合格率が9割を超えるのは「受験までの養成課程=実質的なふるい分け」が済んでいるからで、9割受かる=楽、ではありません。本当の勝負は次の2つです。(1) 養成校で留年・退学せず卒業・受験資格を得ること(2) 消防官採用試験(自治体により倍率数倍〜十数倍、体力検査・年齢上限あり)に通ること。数字の見栄えよりこの2つの難所を重く見てください。

学費の目安と抑え方

養成校ルートを取る場合の学費は学校種別で差があります。あくまで目安として整理します(入学金・施設費・実習費を含むかで総額は変動します)。

学校種別修業年限学費総額の目安
専門学校(2年制)2年約250万〜320万円
専門学校(3年制)3年約350万〜450万円
大学4年約500万〜800万円(私立医療系は800万円超の例も)
消防ルート採用後に研修養成所の学費はほぼ自己負担なし(公費・有給研修)
「学費総額」=「在学中の総支出」ではない

上の表は授業料系の目安です。実際にはこれに在学中の生活費・教材費・実習費・国家試験対策費が上乗せされます。一人暮らしなら家賃・光熱費だけで数百万円規模になることもあるため、進学費用は「学費+生活費の合算」で見積もってください。

出典:各養成校公表の学費(例:キャリアガーデン「救急救命士になるための学校と学費」 https://careergarden.jp/kyukyukyumeishi/gakkou/ /各校公式サイト)を基にした目安。実額は各校の最新募集要項を必ず確認してください。

お金で詰まないために

養成校に進む場合は、日本学生支援機構(JASSO)の奨学金や自治体・学校独自の制度を併用するのが現実的。借りる前に「卒業後の月返済額」と「初任給の手取り」を必ず突き合わせておきましょう。返済設計は奨学金返済の記事で詳しく解説しています。

養成校の学費+奨学金返済が、就職後の家計にどう響くかを試算 → ライフプランシミュレーター

消防官採用試験との関係

救急救命士として最も多い就職先は消防ですが、消防で働くには地方公務員(消防官)採用試験に合格する必要があります。試験は自治体ごとに実施され、教養試験・体力検査・面接などで構成されます。区分(高卒程度のⅢ類、大卒程度のⅠ類など)や受験年齢の上限は自治体で異なり、倍率も数倍〜十数倍と幅があります。志望する消防本部の最新募集要項を必ず確認しましょう。資格保有が採用で有利に働くことはありますが、「救急救命士だから無試験で消防に入れる」わけではありません

取得後の年収・働き方

収入は就職先(身分)で大きく変わります。多数派の消防(地方公務員)は、基本給に加えて夜勤手当・出動手当・時間外手当などが乗り、自治体によっては諸手当だけで月8〜10万円程度になることもあります(自治体差が大きい)。一方、病院(院内救命士)・民間救急は、診療報酬上の位置づけが弱く看護師等に比べ給与テーブルが整備されていない施設も多いのが実態です。資格手当がつかない・補助業務扱い・非正規という下振れもあり得る一方、夜勤手当やボーナスで消防と同水準になる施設もあるなど、施設差が非常に大きい点に注意してください。

働き方身分収入の特徴(目安)
消防(救急隊)地方公務員安定。各種手当が手厚く、勤続で上がりやすい
病院(院内救命士)会社員/職員施設差が大きい。給与テーブル未整備・資格手当なし・非正規の例も。日勤中心の求人もあり
民間救急・救護会社員企業差が大きい。資格手当や夜勤の有無で変動

救急救命士の平均年収は調査により幅が大きく、公務員統計ベースで約630万円台、求人サービス系の統計では420万〜550万円程度と出典間で差があります。おおむね400万〜600万円台が一つの目安で、消防勤務では手当込みでこれを上回ることもありますが、いずれも調査・自治体・施設により変動するあくまで目安です。年収・手取りの詳細は救急救命士のお金の記事職種別の手取り比較もあわせて確認してください。

出典:賃金構造基本統計調査・地方公務員給与実態調査等の公的統計、および各種年収調査(例:キャリアガーデン「救急救命士の年収」 https://careergarden.jp/kyukyukyumeishi/salary/ )を基にした目安。自治体・施設で実額は異なります。

消防(公務員)と病院勤務で、額面から手取りがどう変わるかを比較 → 手取りシミュレーター(転職前後の比較は 転職の手取り比較 も便利)

向いている人・向いていない人

救急救命士は、人の生死に向き合う緊張感の高い仕事です。次のような人に向いています。

  • 体力・チームワークに自信があり、不規則な交代勤務(夜勤・呼び出し)に対応できる
  • 強いストレス下でも冷静に手順を遂行できる
  • 消防(公務員)として地域に根ざして長く働きたい

一方で、夜勤や緊急出動が続く現場で、規則正しい生活や日勤固定を強く望む人にはギャップが大きいこともあります。資格を取っても消防採用に至らない可能性、年齢制限、体力検査などの現実も踏まえて選びましょう。

まとめ

  • ルートは2つ。①消防官→養成所で原則1年以上(短縮課程は6か月以上/養成所の学費負担は少ない)②養成校2〜4年→就職(進路が広い/法令上は原則2年以上・科目履修者は1年以上)
  • 国家試験は年1回・3月。第48回(2025年)の合格率は94.4%(確定値)だが、本当の関門は養成課程と消防官採用試験
  • 学費は専門2〜3年で約250万〜450万円、大学4年で約500万〜800万円が目安(私立は超える例も/生活費は別途)。消防ルートは養成所の学費がほぼ不要。
  • 年収は身分で変動。消防(公務員)は手当が手厚く安定。病院・民間は施設差が大きい。「資格=消防就職」ではない点に注意。
  • 奨学金を使うなら、返済額と就職後の手取りを必ず先に試算する。

よくある質問

救急救命士の資格を取れば消防士になれますか?

いいえ。資格と消防官という身分は別です。消防で働くには、別途地方公務員(消防官)採用試験に合格する必要があります。資格は採用で有利に働くことはありますが、合格を保証するものではありません。

最短で何年でなれますか?

養成校ルートなら専門学校2年制が最短の目安で、在学中に国家試験を受けられます。ただし2年制の救急救命士養成課程は数が少なく選択肢が限られるのが実情で、多くは3年制や大学4年です。「最短2年」だけが独り歩きしないよう注意してください。卒業後に消防等の就職活動が別途必要な点も同じです。

社会人や他職種からでも目指せますか?

可能です。年齢が消防官採用の上限内であれば消防ルートを、上限が近い・確実に資格を先に取りたい場合は養成校ルートを検討します。学び直しの学費・生活費の設計が鍵になるため、奨学金の記事も参考にしてください。

国家試験はどのくらい難しいですか?

第48回(2025年)の合格率は94.4%と高めですが、これは養成課程の修了者が受けるためです。受験までに養成校での留年・退学を避けて受験資格を得ることのほうが実質的な関門で、必修問題と通常問題の両方で基準点を満たす必要があります。

消防と病院、どちらが収入は高いですか?

一概には言えません。消防(公務員)は各種手当と安定性が強み、病院・民間は施設差が大きく、給与テーブルが整備されていない施設では下振れもあれば、夜勤手当やボーナスで消防と同水準になる施設もあります。額面ではなく手取りで比較するのがおすすめです。


免責:本記事は2025年(令和7年)時点で確認できる公開情報に基づく一般的な進路ガイドであり、特定の学校・進路・就職を保証する助言ではありません。学費・年収・受験資格は「目安・最新」であり、制度改正や自治体・各校の運用で変わります(国家試験の確定結果を除く)。実際の出願・受験・就職にあたっては、必ず各機関の最新の公式情報をご確認ください。参照源:厚生労働省「第48回救急救命士国家試験の合格発表」2025年(https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000200942_00007.html)、救急救命士法 第34条・同施行規則(e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/403AC0000000036 )、一般財団法人日本救急医療財団「救急救命士国家試験」(https://qqzaidan.jp/siken/ )、各養成校公表資料・各種年収調査。

監修・運営:黒田 律(くろだ りつ)

内科医・産業医(医師8年目)/投資家

地方の病院で内科診療を続けながら、産業医として「働く人の心身とお金」に向き合う医師。記事は税・制度などを公的な一次情報で確認し、医療・制度面を監修しています。運営者・編集方針について →