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薬剤師になるには|薬学部6年・薬剤師国家試験・学費とお金【2026年版】

2026年6月19日 更新 / メディカルマネー編集部 / 監修:黒田律(内科医・産業医) / 初級者向け

この記事のゴール

薬剤師になるための王道ルート(薬学部6年制薬学科→薬剤師国家試験)を、受験資格・合格率・学費・社会人ルート・取得後のお金まで、最新の一次情報で正確に把握できること。とくに「6年制と4年制の違い」「私立で1,000万円超という学費の重さ」を、夢だけでなく現実として理解し、回収の見通しまで立てられるようにします。

薬剤師になる道は「薬学部6年制」が基本

結論から言うと、薬剤師になるには6年制の薬学部(薬学科)を卒業して薬剤師国家試験に合格する、これが基本のルートです。看護や介護のように複数の養成課程や実務経験ルートがあるわけではなく、入口が大学の薬学科にほぼ絞られているのが薬剤師という資格の大きな特徴です。

2006年度(平成18年度)に薬学教育が4年制から6年制へ移行し、現在「薬剤師を目指す課程」は6年制の薬学科が中心になりました。高校生はもちろん、社会人や他職種から目指す場合も、まずは大学受験で6年制薬学科に入り直すところから始まります。

「薬学部に行けば薬剤師になれる」は半分正解

同じ薬学部でも、6年制(薬学科)と4年制(薬科学科・創薬科学科など)は進路が大きく異なります。4年制は研究者・開発職を養成する課程で、原則として卒業しただけでは薬剤師国家試験の受験資格は得られません。志望校・志望学科を選ぶ段階で取り違えると進路に大きく響くので、後述の比較表を必ず確認してください。

6年制(薬学科)と4年制(薬科学科)の違い

薬学部には大きく2つの課程があります。薬剤師を目指すなら6年制の薬学科です。4年制の薬科学科は新薬開発や基礎研究を志す人向けで、進路もお金の流れもまったく異なります。

項目6年制(薬学科)4年制(薬科学科 等)
主な目的薬剤師の養成研究者・開発者の養成
修業年限6年4年(+大学院が一般的)
薬剤師国家試験受験できる原則受験できない
特徴的な学び薬学共用試験(CBT・OSCE)、病院・薬局での長期実務実習研究室での基礎研究中心
主な進路調剤薬局・ドラッグストア・病院・製薬企業(MR等)製薬企業の研究開発職、大学院進学
💡迷ったら6年制を選ぶ

「薬剤師になる可能性を1%でも残したい」なら、入学時点で6年制薬学科を選んでおくのが安全です。4年制から薬剤師を目指す転科・編入は制度上きわめて限定的で、現実的なルートとは言えません。研究職に強い関心があり、薬剤師免許は不要と割り切れる人だけが4年制を検討する、という順序で考えると失敗しにくいです。

4年制卒でも受験できる「経過措置」は実質的に終了

厳密には、平成18年4月~平成30年3月に4年制薬学課程へ入学・卒業し、さらに薬学系大学院(修士・博士)を修了して所定の単位を満たした人は、厚生労働大臣の受験資格認定を受ければ4年制卒でも受験できる経過措置があります。ただし対象は平成29年度入学までで、新規の入口はすでに閉じています。2025年にこれから進学する人には実質当てはまらないため、「これから目指すなら6年制薬学科」と考えて差し支えありません。

出典:厚生労働省「4年制薬学課程を卒業した方などの薬剤師国家試験の受験資格について」(https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iyakuhin/yakuzaishi-kokkashiken/4nensei.html )。対象入学年度・要件は同省の通知でご確認ください。

薬剤師国家試験の受験資格と合格率(第110回・2025年)

薬剤師国家試験は年1回実施されます。第110回は令和7年(2025年)2月22・23日に行われ、合格発表は3月25日でした。受験資格は原則として6年制薬学課程を修了(見込み含む)した者に限られます。試験は必須問題・薬学理論問題・薬学実践問題で構成され、毎年「相対基準」でボーダーが調整されます。

厚生労働省が発表した第110回の結果は次のとおりです。なお合格率には「総数(既卒を含む全体)」と「新卒」の2つの見方があり、混同しないことが重要です。下表は基準を分けて示します。

区分基準受験者数合格者数合格率(目安)
全体総数(新卒+既卒)13,310名9,164名68.85%
新卒新卒のみ8,061名6,849名84.96%
既卒既卒のみ約43.9%

出典:厚生労働省「第110回薬剤師国家試験の合格発表について」令和7年(https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000199343_00012.html )。既卒合格率はヤクヨミ「薬剤師国家試験の合格率」(https://yakuyomi.jp/aim/useful_content/01_024/ )。

設置主体別・大学別の合格率(基準をそろえて読む)

同じ第110回でも、設置主体(国立・公立・私立)や大学によって合格率は大きく異なります。ここで「総数」と「新卒」を同じ列に混ぜると誤読のもとになります。たとえば私立は総数だと約67.5%ですが、新卒に限れば約84.4%まで上がります。下表は両方を並べて示します。

設置主体総数の合格率(目安)新卒の合格率(目安)
国立大学約83.8%約90.6%
公立大学約82.9%約88.2%
私立大学約67.5%約84.4%

出典:設置主体別の数値は厚生労働省「第110回薬剤師国家試験 学校別合格者数」別添PDF(https://www.mhlw.go.jp/content/11121000/001457736.pdf )および各校公表値を集計したヤクメド「薬剤師国家試験2025 大学別合格率」(https://yakumed.jp/articles/1052 )。厚労省の本文ページには設置主体別の数値は掲載されていません。

「どの薬学部でも同じに受かる」わけではない

大学別の差は非常に大きく、第110回の総数(既卒を含む全体)の合格率でみると、約96.5%(千葉大学)から約26.0%(姫路獨協大学)まで、約70ポイントもの開きがありました。新卒だけでみれば東北大学・京都大学が100%に達する一方、私立では新卒でも大学差が残ります。「合格率は総数か新卒か、どちらの数字か」を必ず確認したうえで、進学先選びの段階で各校の公表値を見比べることをおすすめします。

出典:各大学公表値を集計したヤクメド「薬剤師国家試験2025 大学別合格率」(https://yakumed.jp/articles/1052 )。大学別の正確な数値は各大学の公式発表でご確認ください。

学費は私立で1,000万円超|お金の壁を直視する

薬剤師ルート最大のハードルは、6年間という長さとそれに伴う学費の重さです。国公立と私立で総額が3〜4倍違うため、進学先の選択がそのまま家計設計に直結します。

区分6年間の学費(目安)備考
国立大学約350万円入学料約28.2万円+年額約53.58万円×6年。どの大学もほぼ同額
公立大学約340〜400万円県外出身は入学金が高い場合あり
私立大学約900〜1,400万円超大学差が大きい。近年は総額1,400万〜1,500万円超の大学もある

出典:国立大学の標準額は文部科学省告示に基づく目安。私立のレンジは各大学公表の学費情報をまとめた解説(ヤクヨミ「薬学部の学費」https://yakuyomi.jp/aim/useful_content/01_009/ 、横浜薬科大学オウンドメディア「薬学部の学費はいくらかかる?」2025年 https://www.hamayaku.ac.jp/media/2025/06/faculty-of-pharmacy/ )。金額は授業料・入学金の目安で、教科書代・実習費・生活費は別途必要です。

私立は学費だけで1,200万円前後、上振れも

私立薬学部は年間150〜250万円ほどかかり、6年間で1,000万円を超えるのが一般的です。大学によっては総額1,400万〜1,500万円超になるケースもあります。さらに一人暮らしの生活費、教科書・白衣・実習にかかる費用が上乗せされます。「私立に行くなら1,200万円前後、大学によってはそれ以上を覚悟する」くらいの感覚で、入学前に家族と資金計画を共有しておくことを強くおすすめします。

奨学金・修学支援で学費の壁を下げる

学費が払えそうにない場合でも、いきなり進学を諦める必要はありません。代表的な支援制度を組み合わせれば、負担をかなり圧縮できます。ただし制度ごとに要件があり、誰でも満額使えるわけではない点には注意が必要です。

  • 日本学生支援機構(JASSO)の貸与奨学金:第一種(無利子)と第二種(有利子・月額2万〜12万円から選択)。卒業後に返済する借金である点は理解が必要です。
  • 高等教育の修学支援新制度:給付奨学金(返済不要)+入学金・授業料の減免。ただし住民税非課税世帯およびそれに準ずる世帯が中心で、一定の収入がある社会人本人の世帯は対象外になりやすい点に注意。
  • 大学独自の特待生・授業料減免制度:成績優秀者は年間授業料が大きく下がる場合があり、私立では総額が数百万円変わることもあります。

出典:日本学生支援機構(JASSO)奨学金制度(https://www.jasso.go.jp/shogakukin/ )、文部科学省「高等教育の修学支援新制度」(https://www.mext.go.jp/kyufu/ )。金額・要件は年度により変動します。

💡「借りる前に返済シミュレーション」を

第二種奨学金を上限(月額12万円)まで6年間(72か月)借りると、元本だけで約864万円に達し、利子を加えると返済総額はそれを上回ります。月々の返済が十数年続くため、社会人になってからの手取りと返済額を事前に試算しておくと、無理のない借入額が見えてきます。奨学金返済の具体例は奨学金返済の記事で詳しく扱っています。

取得後の手取りから逆算して返済余力を確かめる → 手取りシミュレーター

社会人・他職種から薬剤師を目指すルート

「働きながら、最短ルートで薬剤師に」という近道は、残念ながらありません。社会人であっても6年制薬学科に入学し直し、6年間通って国家試験に合格するという道筋は同じです。夜間課程や通信課程で薬剤師を養成する仕組みは存在しないため、フルタイムで6年間学ぶ前提になります。

社会人ならではの負担も正直に押さえておきましょう。最大のコストは6年間フルタイムで学ぶあいだ収入が途絶えること(逸失収入)です。同年代で働いていれば得られたはずの収入が、学費とは別に「見えないコスト」としてのしかかります。加えて、卒業時の年齢が上がるほど就職や費用の回収にかかる期間で不利になりやすい点も、踏み込んで考える必要があります。

そのうえで、社会人が現実的に検討できる工夫は次のとおりです。

  • 国公立を狙って学費を抑える:6年間で約350万円に収まれば、私立より回収がはるかに楽になります(ただし入試難易度は高め)。
  • 奨学金・支援制度の活用:年齢に上限はなく、要件を満たせば社会人でも利用できます。ただし修学支援新制度は住民税非課税世帯等が中心で、収入のある社会人本人の世帯は対象外になりやすいため、対象になるかを事前に確認しましょう。
  • 編入学制度の確認:他学部卒業者向けの編入枠を設ける大学もありますが、枠は少なく、入学後の修業年限が大きく短縮されるわけではない点に注意。
「登録販売者」とは別資格

ドラッグストアで一般用医薬品を販売できる登録販売者は、薬剤師とは別の資格です。試験の受験には学歴・実務経験の要件がなく、独学でも目指せます(ただし正規の登録販売者として一人で売場を管理するには、別途一定の実務経験が必要です)。取得難易度・費用・期間が薬剤師とは大きく異なるため、「医薬品にかかわる仕事がしたいが6年間は難しい」という人は、まず登録販売者を検討する選択肢もあります。両者の違いは登録販売者とお金の記事で比較しています。

取得後の年収と「学費の回収」を考える

6年間と1,000万円超(私立の場合)を投じる価値があるかは、取得後の収入で判断する必要があります。厚生労働省の最新調査では、薬剤師の平均年収は約599万円(一般労働者)でした。

  • 男性:約651万円/女性:約556万円(目安)
  • 年齢とともに上昇し、50代前半でピーク(平均約744万円)
  • 勤務先(調剤薬局・ドラッグストア・病院・製薬企業)や地域で差が大きい

出典:厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査」(https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/kouzou/z2024/index.html )。職種・地域・経験により変動する目安値です。

💡「回収」は手取りと逸失収入も込みで考える

国公立(学費約350万円)は私立より回収が早いのは事実ですが、「平均年収599万円で数年回収」と単純化するのは楽観的です。実際には、(1)在学6年間は無収入で、同年代なら得られたはずの収入(逸失収入)も実質的なコストになる、(2)年収599万円から税・社会保険料・生活費を引いた手取りのうち学費返済に回せる分で考える必要がある、という2点を踏まえると、回収はもう少し長い目で見るのが現実的です。私立(1,000万円超)+奨学金の組み合わせはさらに時間がかかるため、進学先と借入額の設計がそのまま将来の家計を左右します。職種別・勤務先別の年収比較は薬剤師とお金の記事職種別の手取り比較もあわせて確認してください。

まとめ

  • 薬剤師になるルートは6年制薬学科→薬剤師国家試験合格が基本。社会人でも近道はなく、6年間の収入断絶も実質コスト。
  • 同じ薬学部でも4年制(薬科学科)は原則受験資格が得られない。経過措置は新規入口が閉じているため、これから目指すなら6年制を選ぶ。
  • 第110回(2025年)の合格率は総数68.85%、新卒約85%、既卒約44%。「総数か新卒か」を区別し、大学差も大きいことを直視する。
  • 学費は国公立約350万円に対し私立は約900〜1,400万円超。奨学金・修学支援で負担は下げられるが、要件に注意。
  • 取得後の平均年収は約599万円。回収は手取り・逸失収入も込みで長い目で設計するのが現実的。

よくある質問

薬剤師国家試験は誰でも受けられますか?

いいえ。原則として6年制薬学課程を修了(または修了見込み)した人だけが受験できます。4年制の薬科学科を卒業しただけでは受験資格は得られません(過去の入学者向けの経過措置はありますが、新規の対象はすでに終了しています)。

4年制の薬学部を出ても薬剤師にはなれませんか?

4年制(薬科学科・創薬科学科など)は研究者養成が目的で、原則として卒業しただけでは薬剤師国家試験の受験資格はありません。これから薬剤師を目指すなら6年制薬学科を選んでください。

社会人から薬剤師になる最短ルートはありますか?

残念ながら近道はなく、6年制薬学科に入学し直して6年間学ぶのが基本です。夜間・通信での薬剤師養成課程は存在しません。6年間は収入が途絶える点も大きなコストになるため、学費を抑えるなら国公立、負担軽減には奨学金・修学支援新制度(要件あり)の活用を検討しましょう。

私立薬学部の学費はどのくらい必要ですか?

6年間で約900〜1,400万円超が目安です(授業料・入学金。大学によってはそれ以上)。これに生活費・教科書代・実習費が加わるため、私立なら総額1,200万円前後、上振れもあると見込んでおくと安心です。

登録販売者と薬剤師は何が違いますか?

登録販売者は一般用医薬品(第2類・第3類)を販売できる別資格で、試験の受験に学歴要件がなく独学でも目指せます(一人で売場管理するには実務経験が必要)。一方、薬剤師は調剤やすべての医薬品を扱える国家資格で、6年制大学の卒業が必須です。難易度・費用・期間が大きく異なります。


免責:本記事は2025年(令和7年)時点の公開情報をもとにした一般的な進路ガイドであり、特定の進学・就職・借入を勧誘・保証するものではありません。学費・合格率・年収・奨学金の数値はいずれも目安であり、大学・年度・勤務先・地域により変動します。最新かつ正確な情報は必ず各大学・各実施機関の公式発表でご確認ください。参照源:厚生労働省「第110回薬剤師国家試験の合格発表について」、厚生労働省「4年制薬学課程を卒業した方などの薬剤師国家試験の受験資格について」、厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査」、日本学生支援機構(JASSO)、文部科学省「高等教育の修学支援新制度」、各大学公表資料。監修:内科医・産業医 黒田律。

監修・運営:黒田 律(くろだ りつ)

内科医・産業医(医師8年目)/投資家

地方の病院で内科診療を続けながら、産業医として「働く人の心身とお金」に向き合う医師。記事は税・制度などを公的な一次情報で確認し、医療・制度面を監修しています。運営者・編集方針について →