資産形成

企業型DC・iDeCoの上限改正ガイド
2024年と2026年、何がどう変わる?

2026年6月9日 更新 / メディカルマネー編集部 / 監修:黒田律(内科医・産業医)

確定拠出年金(企業型DC)とiDeCoの拠出上限が、2024年12月2026年12月の2段階で大きく変わります。とくに2026年12月の改正は、企業年金のない会社員のiDeCo上限が月2.3万円から月6.2万円へと約2.7倍になる大改正です。

医療職にとっても影響は大きく、大病院の企業型DC加入者、公立病院の公務員、クリニック開業医など、立場によって使える枠が変わります。この記事では、改正の全体像を整理し、医療職がどう活用すべきかを具体的な節税試算つきで解説します。

(NISAとiDeCoの基本的な違いは NISA・iDeCo入門 をどうぞ。)

この記事でわかること

2024年12月・2026年12月それぞれの改正内容、改正前後の比較表、医療職の立場別の活用法、そして具体的な節税シミュレーション。自分の拠出枠がいくらになるか把握できます。

確定拠出年金のキホン — DCとiDeCoの違いをおさらい

まず用語を整理します。「確定拠出年金」には2種類あります。

  • 企業型DC(企業型確定拠出年金):勤務先が掛金を拠出する企業年金。病院によっては「確定拠出年金」「企業型年金」などの名称で導入されています。掛金は事業主が負担し、従業員が自分で運用商品を選びます。
  • iDeCo(個人型確定拠出年金):自分で掛金を出し、自分で運用する私的年金。掛金は全額が所得控除(小規模企業共済等掛金控除)になり、毎年の所得税・住民税が軽くなります。

どちらも運用益は非課税で、原則60歳まで引き出せない老後資金専用の制度です。違いは「誰が掛金を出すか」と「上限額の決まり方」。そして今回の改正で変わるのが、この上限額です。

!DB(確定給付企業年金)とは

DCとは別に、DB(確定給付企業年金)という制度もあります。DBは将来の給付額があらかじめ決まっている企業年金で、大企業や一部の大病院で導入されています。今回の改正では、このDB加入者のiDeCo枠が大きく変わります。自分の病院にDBがあるかわからない場合は、人事部門に確認してください。

【2024年12月】何が変わったか — DB加入者のiDeCo上限引き上げ

2024年12月の改正はすでに施行済みです。主な変更点は以下のとおり。

DB等に加入している人のiDeCo上限が引き上げ

改正前、DB(確定給付企業年金)等に加入している人のiDeCo拠出上限は月額1.2万円でした。これが月額2万円に引き上げられました。公務員(公立病院職員、国立病院機構の職員など)もこのカテゴリに含まれるため、影響を受ける医療職は少なくありません。

iDeCo限度額の計算方法が変更

2024年12月からは、次の計算式でiDeCoの限度額が決まるようになりました。

!新しい計算式(2024年12月〜)

iDeCo限度額(上限2万円) = 5.5万円 − 企業型DC事業主掛金 − DB等掛金相当額

この計算を自動で行うために、「企業年金プラットフォーム」という仕組みが導入されました。加入者が自分でDB等の掛金相当額を調べる必要はなく、システムが自動計算してiDeCoの限度額を算出します。

!月額2万円はあくまで上限

計算の結果、5.5万円から各種掛金を差し引いた残りが2万円を超えていても、iDeCoの拠出は月2万円が上限です。逆に、DB等の掛金相当額が大きい場合は、iDeCoに拠出できる金額が2万円より小さくなることもあります。

【2026年12月】大改正のポイント — 上限大幅アップ・年齢引き上げ

2026年12月に予定されている改正は、令和7年度税制改正大綱に盛り込まれたもので、確定拠出年金の制度を根本から変える大改正です。主なポイントは4つあります。

1. 拠出上限額の大幅引き上げ

これが最大のインパクトです。加入区分ごとに見ていきます。

  • 第1号被保険者(自営業・フリーランス・開業医):iDeCo+国民年金基金の共通上限が月額6.8万円から月額7.5万円(年間90万円)に引き上げ。
  • 第2号被保険者(会社員)で企業年金なし:iDeCo上限が月額2.3万円から月額6.2万円に。約2.7倍の大幅アップです。
  • 第2号被保険者で企業型DCあり:企業型DCの上限が月額5.5万円から月額6.2万円に引き上げ。

2. iDeCo単体の上限が廃止、合計上限のみに

現行制度ではiDeCoに個別の上限(月2万円や月2.3万円など)がありますが、改正後はiDeCo単体での上限が廃止されます。代わりに、企業型DC・DB・iDeCoを合わせた合計上限のみが適用される形になります。企業年金の掛金が少ない人ほど、iDeCoに回せる枠が大きくなる仕組みです。

3. iDeCo加入可能年齢の引き上げ

iDeCoに加入できる年齢が65歳から70歳に引き上げられます。定年後も働き続ける医療職にとって、60代後半でもiDeCoの節税メリットを活用できるようになる大きな変更です。

4. マッチング拠出の上限撤廃

企業型DCには、事業主掛金に上乗せして従業員が自分で拠出する「マッチング拠出(加入者掛金制度)」があります。現行ではマッチング拠出の上限は「事業主掛金額以下」という制限がありますが、この制限が撤廃される予定です。事業主掛金が少ない場合でも、自分で多めに上乗せできるようになります。

マッチング拠出 vs iDeCo併用

企業型DCがある場合、「マッチング拠出」と「iDeCo併用」は選択制です。どちらが有利かは、事業主掛金の額や運用商品のラインナップによって変わります。マッチング拠出の上限が撤廃されると、選択の判断材料も変わるため、改正後に改めて検討する価値があります。

改正前後の比較表 — パターン別

主な加入パターンごとに、改正前・2024年12月改正後・2026年12月改正後の上限を比較します。

加入パターン改正前2024年12月〜2026年12月〜(予定)
第1号(自営業・開業医)
iDeCo+国民年金基金
月6.8万円月6.8万円(変更なし)月7.5万円(年90万円)
第2号・企業年金なし
iDeCo
月2.3万円月2.3万円(変更なし)月6.2万円
第2号・企業型DCのみ
企業型DC上限
月5.5万円月5.5万円(変更なし)月6.2万円
第2号・DB等あり
iDeCo上限
月1.2万円月2万円合計上限のみ適用
公務員
iDeCo上限
月1.2万円月2万円合計上限のみ適用
加入可能年齢65歳未満65歳未満(変更なし)70歳未満

※2026年12月の数字は令和7年度税制改正大綱に基づく施行予定です。今後の法改正で変更される可能性があります。

医療職はどう活用する? — 病院のDCとiDeCoの組み合わせ、節税試算

医療職の勤務先は大きく3つのパターンに分かれます。それぞれのケースで、改正がどう影響するかを見ていきます。

パターン1:大病院(企業型DCあり)の看護師・薬剤師

多くの大規模病院(民間の医療法人、大学病院の一部など)は企業型DCを導入しています。事業主掛金が月1万〜2万円程度というケースが多いでしょう。

  • 現在:企業型DC上限は月5.5万円。事業主掛金が月1.5万円なら、マッチング拠出またはiDeCo併用で上乗せ可能。
  • 2026年12月〜:企業型DC上限が月6.2万円に拡大。さらにマッチング拠出の「事業主掛金以下」という制限が撤廃。自分で拠出できる枠が広がります。

パターン2:公立病院・国立病院機構の職員(公務員・みなし公務員)

公立病院の看護師や国立病院機構の職員は、公務員またはみなし公務員に該当します。企業型DCはなく、iDeCoのみで老後の上乗せを行います。

  • 改正前:iDeCo上限は月1.2万円(年間14.4万円)しかなかった。
  • 2024年12月〜:月2万円(年間24万円)に引き上げ済み。
  • 2026年12月〜:合計上限のみが適用される形に移行し、さらに拡充が見込まれます。

パターン3:クリニック開業医(個人事業主)

個人事業主の開業医は第1号被保険者です。

  • 現在:iDeCo+国民年金基金の合計上限は月6.8万円。
  • 2026年12月〜:合計上限が月7.5万円(年間90万円)に。さらに小規模企業共済(月7万円・年84万円)と合わせると、年間174万円が全額所得控除に。高所得の開業医にとっては強力な節税手段です。

節税シミュレーション

iDeCoの掛金は全額が小規模企業共済等掛金控除として所得控除されます。具体的にどれくらい節税になるか、試算してみましょう。

!年収500万円の看護師がiDeCo月2万円を拠出した場合

年間拠出額:2万円 × 12か月 = 24万円
所得税の限界税率10%+住民税10% = 合計20%と仮定すると
節税額:24万円 × 20% = 年間約4.8万円
運用成績に関係なく、拠出するだけで年4.8万円の税金が減ります。30年続ければ節税だけで約144万円。これに運用益の非課税メリットが加わります。

2026年12月改正後、企業年金のない病院に勤める看護師が月6.2万円まで拠出できるようになると、

  • 年間拠出額:6.2万円 × 12か月 = 74.4万円
  • 節税額(限界税率20%の場合):74.4万円 × 20% = 年間約14.9万円

現行の月2.3万円拠出(年間27.6万円 × 20% = 年約5.5万円)と比べると、節税効果が約2.7倍になります。もちろん、60歳まで引き出せない点は変わらないので、生活に余裕がある範囲での拠出が前提です。

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今すぐやるべきこと — 拠出額の見直し、iDeCo口座開設

改正を踏まえて、今すぐ確認・行動できることを整理します。

1. 自分の勤務先の企業年金制度を確認する

まず「自分の病院に企業型DCがあるか」「DB(確定給付企業年金)があるか」を人事部門や給与明細で確認してください。企業年金の有無で、使えるiDeCo枠がまったく変わります。

2. 2024年12月改正(施行済み)で拠出額を見直す

公務員や、DB等に加入している人は、すでにiDeCo上限が月2万円に引き上げられています。従来の月1.2万円のまま拠出を続けている場合は、引き上げの手続きをすることで節税メリットを拡大できます。iDeCoの加入先金融機関で掛金変更の届出を提出してください。

3. まだiDeCo口座がない人は開設を

iDeCo口座の開設には1〜2か月かかることがあります。2026年12月の改正を見据えて、早めに口座を作っておくのがおすすめです。口座があれば、改正後すぐに拠出額を引き上げられます。

4. 2026年12月改正に向けて拠出計画を立てる

改正後にどこまで拠出額を増やすかは、家計の余裕と相談です。生活防衛資金(3〜6か月分の生活費)を確保したうえで、NISAとiDeCoの配分を考えましょう。

!iDeCoは60歳まで引き出せない

上限が大幅に広がるからといって、無理に全額を拠出する必要はありません。教育費やローン返済など近い将来に使うお金は、いつでも引き出せるNISAに回すのが鉄則です。iDeCoは「絶対に老後まで使わない」と決めたお金だけを入れてください。(→ NISAとiDeCoの使い分け

転職するときの注意点

医療職は転職が多い業界です。転職先に企業型DCがあるかどうかで、iDeCoの扱いが変わります。企業型DC → iDeCoへの移換、またはその逆の手続きが必要になることがあります。転職時には忘れずに確認してください。(→ 退職金の受け取り方

まとめ

  • 2024年12月(施行済み):DB等加入者・公務員のiDeCo上限が月1.2万円→月2万円に。企業年金プラットフォームで自動計算する仕組みに。
  • 2026年12月(施行予定):企業年金なしの会社員のiDeCo上限が月2.3万円→月6.2万円に大幅拡充。第1号被保険者は月6.8万→月7.5万円に。加入年齢が65歳→70歳に引き上げ。
  • マッチング拠出の「事業主掛金以下」制限も撤廃予定
  • 医療職では、大病院の企業型DC加入者公立病院の公務員クリニック開業医のいずれも影響を受ける。
  • iDeCoの掛金は全額が所得控除。年収500万円の看護師がiDeCo月2万円→年間約4.8万円の節税。改正後の月6.2万円なら年間約14.9万円の節税。
  • 今すぐできること:勤務先の企業年金を確認、公務員はiDeCo月2万円への引き上げ手続き、まだの人はiDeCo口座開設。
  • ただし、iDeCoは60歳まで引き出せない。近い将来使うお金はNISAに。無理のない範囲で拠出計画を。

節税の全体像は 医療職の節税対策すべて で、投資の基本は 投資のきほん で確認できます。


本記事は令和7年度税制改正大綱(2024年12月閣議決定)および厚生労働省「確定拠出年金制度」の公表資料、iDeCo公式サイト(国民年金基金連合会)の情報にもとづく一般的な解説です。2026年12月施行予定の内容は、今後の国会審議・法改正等により変更される可能性があります。掛金上限や加入資格の詳細は、勤務先の人事部門またはiDeCo加入先の金融機関に確認してください。本記事は税務・投資の助言ではありません。

監修・運営:黒田 律(くろだ りつ)

内科医・産業医(医師8年目)/投資家

地方の病院で内科診療を続けながら、産業医として「働く人の心身とお金」に向き合う医師。記事は税・制度などを公的な一次情報で確認し、医療・制度面を監修しています。運営者・編集方針について →