制度・節約

医療職の副業と確定申告
バイト・非常勤は申告が必要?20万円ルールの正しい理解

2026年6月8日 更新 / メディカルマネー編集部 / 監修:黒田律(内科医・産業医)

「非常勤バイトの収入、確定申告しないとダメ?」「ダブルワークで20万円超えてなければ大丈夫って聞いたけど…」——医療職の間では、こうした疑問が意外と多く聞かれます。

医師の当直バイトや外勤、看護師のダブルワーク、薬剤師の他薬局でのパート。医療専門職は資格を活かした副収入を得やすい反面、確定申告のルールを知らずに放置すると、追徴税(加算税・延滞税)のリスクがあります。

この記事では、医療職に多い副業パターンを整理したうえで、「いつ申告が必要なのか」「住民税で職場にバレるのか」「事業所得と雑所得はどう違うのか」を一次情報(国税庁タックスアンサー・所得税法)にもとづいて解説します。

この記事のゴール

自分の副業が確定申告の対象かどうかを判断できるようになること。申告の流れと注意点も把握し、「知らなかった」で損をしない状態を目指します。

医療職に多い副業のパターン

副業の税金を理解するには、その収入が「何の所得に分類されるか」がカギです。医療職に多い副業を所得区分ごとに整理します。

副業の例所得区分対象職種
非常勤(外来・当直バイト)給与所得医師
産業医・健診バイト給与所得(雇用契約の場合)医師
派遣・パート掛け持ち給与所得看護師・薬剤師・技師
訪問看護ステーション(パート)給与所得看護師
ツアーナース・イベントナース給与所得または雑所得看護師
医学監修・執筆・講演料雑所得(業務委託)医師・薬剤師
オンライン健康相談雑所得医師・看護師・薬剤師
フリマ・物販(メルカリ等)雑所得全職種
ブログ・YouTube雑所得(または事業所得)全職種
💡ポイント

給与所得(雇用契約でもらう給料)と雑所得(業務委託・謝礼など)では、確定申告のルールと対処法が異なります。自分の副業がどちらに該当するか、まず確認しましょう。

確定申告が必要な3つのケース

給与所得者(会社員・常勤職員)が確定申告をしなければならないのは、主に以下の3パターンです(国税庁 No.1900)。

ケース① 給与の年収が2,000万円を超える

年間の給与収入が2,000万円を超える場合、勤務先で年末調整が行われないため、自分で確定申告が必要です。一部の勤務医が該当します。

ケース② 副業の「所得」が20万円を超える

年末調整済みの給与がある人で、それ以外の所得の合計が年間20万円を超える場合、確定申告が必要です。

ここで注意すべきは「収入」ではなく「所得」(=収入 − 必要経費)である点です。たとえば医学監修の報酬が30万円でも、書籍購入費や交通費などの経費が12万円あれば、所得は18万円となり、申告は不要です。

ケース③ 2か所以上から給与をもらっている

これが医療職で最も多いパターンです。本業の病院以外に非常勤バイトや掛け持ちパートで給与をもらっている場合が該当します。

正確には、「従たる給与」の収入金額と、給与所得・退職所得以外の所得の合計が20万円を超える場合に確定申告が必要です。非常勤バイトの月額が数万円でも、年間で20万円はすぐに超えます。

注意

医師の当直バイト・非常勤外来は、ほぼ確実に確定申告が必要です。月1回の当直バイトでも、1回3〜5万円 × 12か月 = 年間36〜60万円。20万円は確実に超えます。

「20万円以下なら申告不要」の落とし穴

「副業が20万円以下なら確定申告しなくていい」——これは半分正しく、半分間違いです。

所得税の確定申告は不要

副業の所得(給与所得以外)が20万円以下、または従たる給与と合わせて20万円以下であれば、所得税の確定申告は不要です。これは所得税法121条に定められたルールです。

住民税の申告は必要

しかし、住民税にはこの「20万円ルール」が適用されません。副業の所得が1円でもあれば、原則として市区町村への住民税の申告が必要です。

所得税の確定申告をすれば、そのデータが市区町村に送られるため住民税の申告は不要になります。しかし「20万円以下だから」と所得税の申告をしなかった場合、住民税の申告だけは別途行う必要があります。

副業所得所得税の確定申告住民税の申告
20万円超必要確定申告すれば不要
20万円以下不要必要(市区町村へ)
0円(副業なし)不要不要

出典:国税庁 No.1900「給与所得者で確定申告が必要な人」/ freee「副業所得20万円以下でも確定申告と住民税の申告は必要?」

甲欄と乙欄——源泉徴収の仕組み

2か所以上から給与をもらう場合、源泉徴収票に「甲欄」と「乙欄」の区分があることを知っておく必要があります。

甲欄乙欄
適用される勤務先「扶養控除等申告書」を提出した1か所それ以外のすべて
税率低い(控除が反映される)高い(一律で多めに徴収)
年末調整ありなし

非常勤先・バイト先の給与は「乙欄」で源泉徴収されるため、税率が高めに設定されています。これは仮の金額で多めに天引きしているだけなので、確定申告で甲欄の本業と合算すると、払いすぎた税金が還付されるケースが多いのです。

実は得する場合が多い

確定申告は「追加で税金を取られる」イメージがありますが、2か所給与の場合は乙欄で多めに引かれた分が戻ってくることがほとんどです。面倒でも申告すると手取りが増えます。

事業所得と雑所得の区分(2022年通達改正)

業務委託での監修料や講演料、ブログ・YouTube収入などは「事業所得」か「雑所得」に分類されます。これは節税に直結する重要な区分です。

事業所得雑所得
青色申告特別控除最大65万円なし
損益通算可能(給与所得と相殺)不可
赤字の繰越3年間不可

2022年10月に国税庁が所得税基本通達を改正し、区分の基準が明確化されました。

  • 帳簿書類(仕訳帳・総勘定元帳等)を保存している場合は、原則として事業所得として扱われる
  • 帳簿保存がなく、収入が300万円以下の場合は、原則として雑所得
  • ただし、収入300万円以下でも帳簿保存があれば事業所得と認められうる

副業の規模が大きくなってきたら、帳簿をつけて事業所得として申告すると、青色申告特別控除(最大65万円)が使えるため、大幅な節税になります。

出典:国税庁「所得税基本通達の制定について」(令和4年10月7日改正)法第35条関係

住民税で副業がバレる仕組みと対策

「副業が職場にバレるのが心配」という声は、看護師を中心に非常に多く聞かれます。バレる最大の原因は住民税の額です。

バレる仕組み

  1. 確定申告(または住民税申告)をすると、副業を含めた総所得に基づいて住民税が計算される
  2. 住民税は原則「特別徴収」=勤務先の給与から天引き
  3. 本業の給与に対して住民税が不自然に高いと、経理担当が気づく

対策:「普通徴収」を選ぶ

確定申告書の「住民税に関する事項」欄で、副業分の住民税を「自分で納付」(普通徴収)にチェックすると、副業分は自宅に届く納付書で直接払うことになり、勤務先に通知されません。

ただし限界がある

本業・副業ともに「給与所得」の場合(看護師のダブルワーク等)、副業分だけを普通徴収にすることが法律上できない自治体が大半です。現在、全国の自治体で「特別徴収の完全実施」が進んでおり、給与所得の分離が困難になっています。

業務委託(雑所得)の副業であれば、普通徴収を選択できるケースが多くなります。

確定申告の手順(医療職向け)

実際の申告は、以下の流れで進めます。

① 必要書類を集める(1月〜)

  • 源泉徴収票:本業+副業のすべての勤務先から受け取る(1月末までに交付義務あり)
  • 支払調書:業務委託の報酬がある場合(発行義務は法人側にあるが、届かないこともある。その場合は自分の記録で申告)
  • 経費の領収書・記録:雑所得・事業所得の必要経費を証明するもの
  • 医療費の領収書医療費控除を併せて申告する場合
  • ふるさと納税の寄附金受領証明書:確定申告する場合、ワンストップ特例は使えないため、ふるさと納税も申告書に記載する

② 確定申告書を作成する(2月〜)

国税庁の「確定申告書等作成コーナー」(e-Tax)がもっとも手軽です。源泉徴収票の内容を入力するだけで、税額の計算と還付額の算出が自動で行われます。スマホからも申告可能です。

より簡単にしたい場合は、会計ソフト(freee、マネーフォワードクラウド確定申告など)を使うと、経費の入力や帳簿作成まで一括で対応できます。

③ 申告・納税する(2月16日〜3月15日)

e-Taxでオンライン提出するか、税務署に持参・郵送します。還付がある場合は、申告から1〜2か月程度で指定口座に振り込まれます。

💡還付申告は5年間可能

払いすぎた税金を取り戻す「還付申告」は、確定申告期間(2〜3月)に限らず、翌年1月1日から5年間いつでも提出可能です。過去に申告し忘れた分があれば、遡って申告できます。

本業+副業の合算手取りを確認 → 手取りシミュレーター

申告しなかった場合のリスク

「面倒だから」「バレないだろう」と申告しなかった場合、以下のペナルティが発生する可能性があります。

ペナルティ内容
無申告加算税納付すべき税額の15〜20%(50万円超の部分は20%)
延滞税納期限の翌日から年2.4%、1か月経過後は年8.7%(2025年)
重加算税仮装・隠ぺいと認定された場合、35〜40%

医療機関からの給与は税務署に「給与支払報告書」が提出されるため、副業が給与所得の場合は税務署が把握しやすい構造になっています。「申告しなくてもバレない」という考えはリスクが高いと言えます。

医療職の副業と就業規則

税金の問題とは別に、勤務先の就業規則も確認しておきましょう。

  • 公立病院・国立病院機構:公務員またはみなし公務員のため、原則として副業禁止(国家公務員法103条・104条、地方公務員法38条)。ただし講演・執筆など一部は許可制で認められる場合あり
  • 民間病院:就業規則による。近年は副業・兼業を認める方向に政策が進んでおり(厚労省「副業・兼業の促進に関するガイドライン」)、届出制で認める病院も増えている

就業規則に違反した副業は、税金以前に懲戒処分のリスクがあります。必ず事前に確認してください。職種ごとにどんな副業ができるか、就業規則・公務員のルール・始め方を詳しく知りたい方は医療職にできる副業と始め方もあわせてご覧ください。

まとめ

  • 2か所以上から給与をもらっている医療職(医師のバイト、看護師のダブルワーク等)は、ほぼ確実に確定申告が必要
  • 「20万円以下なら不要」は所得税だけの話。住民税の申告は別途必要
  • 乙欄で多めに源泉徴収されているため、確定申告すると還付(税金が戻る)になるケースが多い
  • 業務委託の副業は雑所得。帳簿を保存すれば事業所得として青色申告特別控除(最大65万円)が使える
  • 住民税で副業がバレるのを防ぐには「普通徴収」を選択。ただし給与所得同士の場合は分離できないことが多い
  • 申告しないと無申告加算税(15〜20%)+延滞税のリスク

副業で収入を得ることは、キャリアの幅を広げるうえでも、家計の選択肢を増やすうえでもプラスです。ただし、税金のルールを知らないまま放置すると、後から余計なコストがかかります。年に一度の手続きで安心を買えると考えれば、確定申告は割に合う作業です。

本業と副業を合わせた手取りの全体像は、手取りシミュレーターで確認できます。節税の全体像は 医療職の節税対策すべて もあわせてご覧ください。


本記事は2026年(令和8年)の制度にもとづく一般的な情報です。確定申告の要否は国税庁 No.1900、20万円ルールは所得税法121条、事業所得と雑所得の区分は所得税基本通達35-2(令和4年10月7日改正)、住民税の徴収方法は各自治体の条例によります。個別の税務判断は源泉徴収票や各機関の公式情報をご確認ください。本記事は税務の助言ではありません。

監修・運営:黒田 律(くろだ りつ)

内科医・産業医(医師8年目)/投資家

地方の病院で内科診療を続けながら、産業医として「働く人の心身とお金」に向き合う医師。記事は税・制度などを公的な一次情報で確認し、医療・制度面を監修しています。運営者・編集方針について →