看護師の管理職の年収
主任・師長・看護部長で給料はどう上がる?
看護師としてキャリアを重ねると、主任・看護師長・看護部長といった管理職(役職)への道が見えてきます。「役職に就くと年収はどのくらい上がるのか」「夜勤を外れたら、夜勤手当が減って逆に損をしないか」——これは多くの中堅看護師が抱く、とても現実的な疑問です。
この記事では、日本看護協会「2024年度 看護職員の賃金に関する実態調査」(病院調査・2024年度実績)をもとに、主任から看護部長までの役職別の給与水準・管理職手当を整理します。あわせて、夜勤を外れることで夜勤手当が減る一方、役職手当と基本給が増えるというトレードオフ、そして管理職になると残業代の扱いがどう変わるか(管理監督者性)までを通しで見ていきます。
結論を先に言うと、看護管理職は役職が上がるほど「基本給+管理職手当」が積み上がり、税込の月収・年収は着実に上がっていくのが基本構造です。ただし夜勤手当が減る分や残業代の扱いまで含めて見ないと、上がり幅の実感を見誤ることがあります。
主任・師長・看護部長で給与がどのくらい違うのか、役職手当・基本給・夜勤手当のどれが効いているのかをつかみ、「役職に就くと自分の手取りはどう動くか」を数字で見積もれるようになること。実際の金額は 手取りシミュレーター で計算できます。
看護管理職の役職と、給与の決まり方
病院の看護職のキャリアラダーは、おおむねスタッフ(非管理職)→ 主任 → 副看護師長 → 看護師長 → 副看護部長 → 看護部長という階段になっています(呼称は病院により異なります)。給与は基本的に、次の3つの足し算で決まります。
- 基本給:勤続・等級で上がる土台。役職が上がると等級も上がり、基本給そのものが増える。
- 役職手当(管理職手当):役職に対して付く手当。役職が上がるほど金額が大きくなる。
- その他の手当:夜勤手当・住宅手当・通勤手当など。夜勤を外れると夜勤手当が減るのがここでの論点。
つまり、役職に就くと「基本給」と「役職手当」が増える一方で、「夜勤手当」が減りやすい、という相反する力が同時に働きます。どちらが大きいかで、昇格時の年収の動きが変わってきます。
役職別の給与水準(月額・税込)
日本看護協会「2024年度 看護職員の賃金に関する実態調査」(病院調査)の2024年度実績から、役職別の「基本給月額」と「税込給与総額(月額)」を整理したのが下の表です。税込給与総額には、基本給に加えて役職手当・夜勤手当・住宅手当・通勤手当などが含まれます(時間外手当は含みません)。比較のため、非管理職(勤続10年・31〜32歳)も並べています。
| 役職 | 基本給月額(平均) | 税込給与総額・月額(平均) | 平均年齢 |
|---|---|---|---|
| 非管理職(勤続10年・31〜32歳) | 約25.2万円 | 約34.0万円 | 31〜32歳 |
| 主任相当職 | 約31.2万円 | 約41.8万円 | 49.3歳 |
| 副看護師長相当職 | 約34.7万円 | 約45.4万円 | 51.7歳 |
| 看護師長相当職 | 約35.9万円 | 約46.7万円 | 53.8歳 |
| 副看護部長相当職 | 約39.7万円 | 約50.9万円 | 55.4歳 |
| 看護部長相当職(専任) | 約42.0万円 | 約54.3万円 | 57.7歳 |
| 副院長相当職(看護部長兼任) | 約48.7万円 | 約62.4万円 | 58.9歳 |
出典:日本看護協会「2024年度 看護職員の賃金に関する実態調査(病院調査)」(2024年度実績)。役職別給与額(表40〜46)。税込給与総額は通勤・住宅・家族・夜勤・当直手当等を含み、時間外手当は含まない。同じ職位に複数名いる場合は最も高い額の職員が対象。非管理職は勤続10年・31〜32歳のモデル賃金(税込給与総額約33万9,979円)。(https://www.nurse.or.jp/nursing/assets/kangochingin_report_2024.pdf)
表を縦に見ると、役職が一段上がるごとに税込の月額が数万円ずつ積み上がっていくのがわかります。非管理職の約34万円から、主任で約42万円、師長で約47万円、看護部長で約54万円、看護部長兼任の副院長まで上がると約62万円。基本給そのものも、役職とともに着実に上がっています。
各役職の平均年齢は主任で約49歳、師長で約54歳、看護部長で約58歳と高めです。つまり役職別の給与差には、「役職そのものによる上乗せ」と「勤続・年齢による基本給の伸び」の両方が含まれます。同じ年齢で役職だけが違う場合の差は、表の差より小さくなる点に注意してください。
役職手当(管理職手当)はいくら?
役職別の給与差を生む大きな要素が、役職に対して付く管理職手当です。同じ調査から、管理職手当の「支給している病院の割合」と「平均手当額」を見てみましょう。
| 役職 | 管理職手当が「ある」病院 | 平均手当額(手当がある病院) |
|---|---|---|
| 看護師長相当職 | 75.0% | 約4.96万円/月 |
| 副看護部長相当職 | 55.8% | 約6.46万円/月 |
| 看護部長相当職(専任) | 76.4% | 約8.49万円/月 |
出典:日本看護協会「2024年度 看護職員の賃金に関する実態調査(病院調査)」役職者の手当(表69〜74)。算定方法は「定額(等級等によらず一律)」が最多。(https://www.nurse.or.jp/nursing/assets/kangochingin_report_2024.pdf)
看護師長で月約5万円、看護部長で月約8.5万円という水準です。年額にすれば師長で約60万円、看護部長で約100万円が手当として上乗せされる計算で、これだけでも年収を一段押し上げる力があります。ただし支給率は役職によって5〜8割で、手当の有無・金額は病院ごとに差が大きい点には注意が必要です。「管理職手当が一律でない」「役職に就いても手当が薄い」病院もあるため、昇格の打診があったら手当の金額を具体的に確認するのが現実的です。
夜勤を外れる「トレードオフ」をどう見るか
管理職、とくに師長以上になると夜勤シフトを外れることが多くなります。ここで気になるのが、夜勤手当が減る分です。同じ調査では、夜勤手当の1回あたりの平均は三交代制の準夜勤で約4,567円、深夜勤で約5,715円、二交代制の夜勤で約1万1,815円でした。
仮に二交代の夜勤を月4回こなしていたスタッフが管理職になって夜勤をゼロにすると、月あたり約4.7万円(≒1万1,815円×4回)、年間で約57万円の夜勤手当が消える計算になります。これは決して小さくない金額です。
一方で、管理職になると前述のとおり役職手当(師長で月約5万円)と基本給の上乗せが入ります。つまり「夜勤手当が減る ↔ 役職手当・基本給が増える」というトレードオフであり、多くの場合は役職手当+基本給の増加が夜勤手当の減少を上回るため、トータルの年収は上がるのが一般的です。ただし、夜勤回数が多かった人ほど減る額も大きいため、昇格直後の伸びを実感しにくいケースがある点は押さえておきましょう。
出典:日本看護協会「2024年度 看護職員の賃金に関する実態調査」夜勤手当額(図表16)。(https://www.nurse.or.jp/nursing/assets/kangochingin_report_2024.pdf)
夜勤手当が大きかった人ほど、その喪失で増加分が相殺され、昇格しても手取りの伸びが小さく感じられることがあります。さらに、後述する残業代の扱いが変わると、これまで付いていた時間外手当が付かなくなる場合もあります。役職に就くかどうかは、「役職手当+基本給の増加」から「夜勤手当・残業代の減少」を差し引いた正味の増減で判断するのが正解です。
夜勤手当が減り、役職手当が増える——条件を入れ替えて、手取りがどう動くか確かめてみましょう → 手取りを計算 →
看護部長クラスの年収はどのくらい?
看護部のトップである看護部長は、看護職のキャリアの到達点のひとつです。前述の調査では、看護部長相当職(専任)の税込給与総額は月額平均で約54.3万円。これは月々の給与総額(賞与を含まない)であり、ここに年間賞与が加わります。実際、同調査の個人調査でも、最も高い平均年収は「管理職(看護部長・副院長相当職/管理者)」の約818万円でした。看護部長クラスの年収はおおむね800万円前後を中心に、病院の規模や設置主体で上下するのが目安と考えられます。
同じ看護部長でも幅は大きく、調査では病床規模が大きい病院や東京都特別区ほど水準が高い傾向がありました。看護部長が副院長を兼ねる「副院長相当職(看護部長兼任)」になると、税込給与総額は月額平均で約62.4万円とさらに上がり、賞与を含めた年収が1,000万円前後に届くケースも出てきます(金額は職場により大きく異なる目安です)。
同じ看護部長でも、大規模病院・私立学校法人・会社立などでは水準が高く、中小規模・医療生協などではやや控えめ、という傾向が調査から読み取れます。看護部長クラスを目指すなら、「役職そのもの」に加えてどの規模・設置主体の病院かが年収を左右する、という視点が役立ちます。
管理職と残業代(管理監督者性)の注意点
管理職を考えるうえで見落とせないのが、残業代(時間外手当)の扱いです。労働基準法上の「管理監督者」に当たる人には、原則として時間外・休日労働の割増賃金(残業代)が支給されません。看護師長以上が管理監督者として扱われ、残業代が付かなくなる病院は少なくありません。
実際、同じ調査では看護師長への時間外手当について「支給対象である」が46.1%、「支給対象ではない」が41.4%と、対応が病院によって分かれていました。つまり師長クラスでは、残業代が付く病院と付かない病院がほぼ半々ということです。
出典:日本看護協会「2024年度 看護職員の賃金に関する実態調査(病院調査)」看護師長への時間外手当の支給(表75)。(https://www.nurse.or.jp/nursing/assets/kangochingin_report_2024.pdf)
役職名が付いていても、勤務時間の裁量や待遇が伴わなければ、法律上の「管理監督者」とは認められないことがあります(いわゆる名ばかり管理職)。その場合は残業代の請求対象になり得ます。なお、管理監督者であっても深夜労働(22時〜翌5時の割増)の割増賃金は支払われるのが原則です(労働基準法第41条の適用除外に深夜割増は含まれません)。残業の多い職場で管理職に就くなら、「役職手当が残業代の代わりとして十分か」を冷静に見極めましょう。
額面と手取りは別物|役職が上がるほど手取り率は下がる
ここまでの金額はすべて額面です。実際に口座に入る手取りは、ここから社会保険料(健康保険・厚生年金・雇用保険)と税金(所得税・住民税)が引かれた金額になります。一般に手取りは額面のおよそ75〜80%が目安で、年収が上がるほど所得税の累進で手取り率はやや下がります。
たとえば看護部長クラスで年収が800万円を超えると、手取り率は75%前後まで下がることがあります。役職に就いて額面が増えても、手取りは額面ほどには増えません。役職に就くかどうか、別の病院の管理職ポストへ移るかどうかを比べるときは、必ず手取りベースで考えるのが鉄則です。引かれるお金の中身は 「手取りはなぜ額面の8割なのか」 で1項目ずつ解説しています。手取りの試算は 手取りシミュレーター でできます。
管理職以外で年収を上げる道もある
管理職は年収を上げる有力なルートですが、唯一の道ではありません。マネジメントより臨床を続けたい人には、専門・認定看護師などの資格で評価を高める道があります。これらの資格は、病院によっては資格手当や評価につながり、診療報酬上の加算に関わる領域もあります。資格による昇給の考え方は 専門看護師・認定看護師の年収と取り方 で詳しく整理しています。
また、夜勤・残業・職場選び・転職など、管理職以外も含めた年収アップの方法は 看護師の年収を上げる5つの方法 にまとめています。役職に就く前に、「自分にとって年収を上げる現実的な手段はどれか」を整理しておくと、キャリアの選択がぶれにくくなります。働き方そのものを見直したい人は 看護師の働き方とお金 もあわせてどうぞ。
まとめ
- 看護管理職は、役職が上がるほど「基本給+役職手当」が積み上がる。税込の月額は非管理職の約34万円に対し、主任約42万円・師長約47万円・看護部長約54万円が目安(日本看護協会2024年度調査)。
- 管理職手当は師長で月約5万円・看護部長で月約8.5万円が平均。ただし支給率・金額は病院差が大きいので、昇格時は具体額を確認する。
- 師長以上は夜勤を外れて夜勤手当が減るが、役職手当・基本給の増加がそれを上回るのが一般的。夜勤が多かった人ほど増加を実感しにくい。
- 看護師長以上は管理監督者として残業代が付かない病院もある(師長で支給対象は約46%)。役職手当が残業代の代わりとして十分かを見極める。
- 看護部長クラスの年収は800万円前後が中心で、病院規模・設置主体で大きく動く。副院長兼任なら1,000万円前後も。
- 額面と手取りは別物。年収が上がるほど手取り率は下がるため、役職や転職の比較は手取りベースで。
役職別の平均はあくまで出発点です。手取りシミュレーター に自分の数字を入れて、「役職に就いたら実際にいくら残るのか」を確かめるところから始めてみてください。
本記事の役職別給与は日本看護協会「2024年度 看護職員の賃金に関する実態調査(病院調査)」(2024年度実績)をもとにした全国の目安です。実際の給与・手当・残業代の扱いは勤務先や個々の状況、病院規模・設置主体で大きく異なります。手取りは2026年(令和8年)の税・社会保険制度にもとづく一般的な考え方で、制度は改正される場合があります。本記事は税務・労務の個別助言ではありません。正確な金額や最新の制度は、勤務先・一次情報(日本看護協会・厚生労働省等)・専門家にご確認ください。