資産形成

医療職の教育資金
いくら必要?NISAと学資保険どちらで備える?

2026年6月4日 更新 / メディカルマネー編集部 / 監修:黒田律(内科医・産業医)

「子どもの教育にはいくらかかるんだろう」——出産や育休をきっかけに、漠然とした不安を感じる医療職は多いはずです。

結論から言えば、子ども1人の教育費は全公立ルートで約820万円、全私立なら約2,300万円。金額だけ見ると大きいですが、一括で用意するわけではありません。18年かけて少しずつ準備するものです。

この記事では、教育費の全体像を把握したうえで、「投資で増やす」と「確実に貯める」の使い分け、NISAの活用と取り崩しの考え方を、医療職の家計目線で解説します。

この記事のゴール

教育費の総額感をつかみ、「何年後にいくら必要か」に合わせた備え方を選べるようになること。積立の効果は NISA・iDeCo積立シミュレーター で試算できます。

教育費はトータルでいくらかかるのか

文部科学省「子供の学習費調査」(令和5年度)と大学の学費データをもとに、幼稚園から大学卒業までの教育費の目安をまとめます。

学校種別の年間教育費

学校種年数公立(年間)私立(年間)
幼稚園3年約18.5万円約34.7万円
小学校6年約36.7万円約182.8万円
中学校3年約54.2万円約156.0万円
高等学校3年約59.8万円約103.0万円

出典:文部科学省「令和5年度子供の学習費調査」。学習費総額(学校教育費+学校外活動費)。

大学4年間の学費

区分4年間の合計(目安)
国公立大学約250万円
私立大学(文系)約420万円
私立大学(理系)約570万円
私立大学(医歯系)約2,400万円〜

※入学金・授業料・施設設備費の合計。自宅外通学の場合は生活費が別途かかる。

ルート別の総額

進路パターン幼〜高校大学合計
全公立 → 国公立大約570万円約250万円約820万円
全公立 → 私立大(文系)約570万円約420万円約990万円
全公立 → 私立大(理系)約570万円約570万円約1,140万円
全私立 → 私立大(文系)約1,880万円約420万円約2,300万円
!最大のヤマ場は大学入学時

教育費の支出が最も集中するのは大学の入学初年度です。入学金+前期授業料+受験料+引越し費用などで、100万〜200万円が数か月の間に出ていきます。このピークに対応できる資金を、高校卒業までに準備しておくのが教育資金設計の核です。

教育資金の3つの備え方

教育費の準備手段は、大きく3つに分けられます。それぞれの特徴を理解して、組み合わせるのが現実的です。

① 確実に貯める(預貯金・児童手当)

元本割れのリスクがなく、必要な時期に確実に使えるのが最大の強みです。

児童手当は、2024年10月の制度改正で所得制限が撤廃され、支給期間も高校卒業(18歳の年度末)まで延長されました。全額貯めると以下の金額になります。

年齢月額年間
0〜2歳15,000円18万円
3歳〜高校卒業10,000円12万円
第3子以降30,000円36万円

第1子・第2子の場合、0歳から全額貯めると約234万円(15,000円×36か月 + 10,000円×180か月)。国公立大学の学費をほぼカバーできる計算です。

児童手当は「なかったこと」にする

医療職の共働き家庭なら、児童手当を生活費に組み込まず、受け取ったその月に別口座へ自動振替するのがおすすめ。生まれた瞬間から「自動的に貯まる教育資金」になります。

② 保険で備える(学資保険)

学資保険は、満期時に学資金を受け取れる貯蓄型の保険です。契約者(親)に万が一のことがあった場合に保険料が免除される「払込免除特約」がある点が、貯金にはないメリットです。

メリット

  • 毎月の保険料が自動引き落としで、強制的に貯められる
  • 契約者の死亡時に保険料免除 → 学資金は予定どおり受け取れる
  • 生命保険料控除の対象(年間保険料8万円超で最大4万円控除)

デメリット

  • 利回りが低い(返戻率105%前後が多く、実質年利0.3〜0.5%程度)
  • 途中解約すると元本割れするリスクがある
  • インフレに対応できない(18年後の学費が上がっていても受取額は固定)

③ 投資で増やす(NISA)

2024年から始まった新NISAは、教育資金の準備にも使えます。非課税で運用でき、いつでも売却・引き出しが可能です。

メリット

  • 長期で運用すれば、預貯金や学資保険を上回るリターンが期待できる
  • 運用益が非課税
  • いつでも引き出せる(iDeCoと違い、60歳まで拘束されない)
  • 年間投資枠360万円(つみたて枠120万+成長投資枠240万)で十分な余裕

デメリット

  • 元本保証がない — 必要な時期に値下がりしている可能性がある
  • 自分で売却のタイミングを判断する必要がある
!「使う時期が決まっているお金」に全額投資は危険

教育資金は、住宅や老後と違い「いつ・いくら必要か」がほぼ確定しているお金です。大学入学の18歳が来たとき、株式市場が暴落していても入学金は待ってくれません。教育資金の全額をリスク資産で運用するのは避けるべきです。

時間軸で使い分ける「教育資金のセオリー」

教育資金の備え方は、使うまでの時間で切り替えるのが合理的です。

使うまでの期間おすすめの手段理由
10年以上先NISAで積立投資時間が味方。暴落があっても回復の時間がある
5〜10年先投資と預貯金を半々運用は続けるが、安全資産の比率を高める
5年以内預貯金・個人向け国債元本割れリスクを取れない時間帯
来年〜再来年普通預金すぐ使えるようにしておく

具体例:子どもが0歳の看護師夫婦の場合

月の手取り合計50万円、月3万円を教育資金に回せるとします。

  1. 児童手当(月1〜1.5万円)→ 別口座に全額自動振替。18年で約234万円
  2. 月2万円をNISA(つみたて投資枠)で積立。年利4%で15年運用すると約490万円(元本360万+運用益約130万)
  3. 高校入学(15歳)を目安に、NISAの投資分を段階的に売却→ 預金に移して大学入学費用に備える
  4. 残り月1万円は預貯金に。習い事・塾費用など中短期の出費に充てる

この組み合わせなら、児童手当234万+NISA約490万+預貯金180万=約900万円。全公立→私立大学(文系)ルートの約990万円にかなり近づきます。

NISA・iDeCo 積立シミュレーター毎月の積立額・想定利回り・期間を入れて、将来の資産額を試算。非課税のメリットも確認できます。
シミュレーション →

NISAの「取り崩し」はどう考える?

NISAで積み立てた資産を教育費に充てるとき、「いつ・どう売るか」が悩みどころです。

一括で売らず、段階的に「利確」する

大学入学の3〜5年前から、毎年少しずつ売却して預金に移す方法がおすすめです。一度に全額売却すると、売却タイミングの相場に大きく左右されるためです。

  • 高1(入学3年前):運用資産の1/3を売却 → 預金に
  • 高2(入学2年前):残りの1/2を売却 → 預金に
  • 高3(入学1年前):残りを売却 → 大学入学費用として確保

この「段階的利確」なら、仮に高2のときに相場が下がっていても、高1で売却済みの分は影響を受けません。時間を分散することで、タイミングリスクを減らせます

!NISAは売却しても非課税枠が翌年に復活する

新NISAでは、売却した分の非課税枠(簿価ベース)が翌年に再利用できます。教育資金として取り崩した後も、老後資金の積み立てに枠を再活用できるのは大きなメリットです。

医療職ならではの教育資金のポイント

共働き率が高い=積立余力がある

医療職は女性の就業継続率が比較的高く、出産後も復帰して共働きを続けるケースが多い業界です。世帯収入が安定しやすい分、毎月の積立額を確保しやすいのは強みです。

夜勤・当直で収入に波がある

一方で、夜勤手当や当直手当は月によって変動します。教育資金の積立は基本給ベースで無理のない金額を設定し、手当が多かった月はボーナスとして追加投入するくらいの感覚が続けやすいです。

子どもが医療系に進む可能性

医療職の子どもが同じ道を選ぶケースは少なくありません。私立の医学部・歯学部は6年間で2,000万〜3,000万円以上かかるため、一般的な教育資金の枠では足りません。奨学金の活用や、大学独自の特待制度も含めて早めに情報を集めておくことをおすすめします。

教育ローン・奨学金という選択肢

すべてを事前に貯める必要はありません。国の教育ローン(日本政策金融公庫・固定金利2%前後)や、日本学生支援機構の奨学金(無利子の第一種、低利の第二種)も有力な選択肢です。「貯蓄と借入のバランス」で考えるのが現実的です(→ ローンの記事 で借入の判断軸を解説しています)。

まとめ

  • 教育費は全公立→国公立大で約820万円、全私立→私立大で約2,300万円。
  • 児童手当を全額貯めるだけで約234万円。教育資金の土台になる。
  • 10年以上先の費用はNISAで積立投資、5年以内は預貯金で確保が基本。
  • NISAは入学3〜5年前から段階的に売却して預金に移すのが安全。
  • 学資保険は「強制貯蓄+死亡保障」。利回りは期待せず、保険として割り切る。
  • すべてを貯蓄でまかなう必要はない。教育ローン・奨学金も計画に組み込んで。

教育費は金額が大きいぶん、早く始めるほど月々の負担は軽くなります。子どもが0歳のうちに「児童手当の自動振替」と「NISAの積立設定」を済ませておく——それだけで、18年後の景色はだいぶ変わります。


本記事は2026年(令和8年)時点の制度にもとづく一般的な情報です。教育費の目安は文部科学省「令和5年度子供の学習費調査」に拠ります。本記事は投資・税務の助言ではありません。

監修・運営:黒田 律(くろだ りつ)

内科医・産業医(医師8年目)/投資家

地方の病院で内科診療を続けながら、産業医として「働く人の心身とお金」に向き合う医師。記事は税・制度などを公的な一次情報で確認し、医療・制度面を監修しています。運営者・編集方針について →