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理学療法士・作業療法士・言語聴覚士になるには|養成校・国家試験・費用とお金

2026年6月19日 更新 / メディカルマネー編集部 / 監修:黒田律(内科医・産業医) / 初級者向け

この記事のゴール

リハビリ職と総称される理学療法士(PT)・作業療法士(OT)・言語聴覚士(ST)の3つは、似ているようで仕事も養成ルートも国家試験の難易度も違います。この記事では、3職種の違い・養成校の種類と修業年限・最新の国家試験合格率・学費の目安・社会人からのルート・進路の選び方を、2025年(令和7年)の一次情報で整理します。そのうえで、メディカルマネーの軸である「学費はいくらかかり、取得後の年収でどう回収するか」まで正直に踏み込みます。夢のある仕事ですが、費用と労働実態の現実もあわせてお伝えします。

まず3職種は何が違うのか

リハビリテーション専門職は、ケガや病気・加齢で低下した心身の機能の回復・維持を支援する国家資格です。同じ「リハビリ職」でも、対象とする領域が分かれています。

職種主に扱う領域代表的な仕事の例
理学療法士(PT)立つ・歩くなど基本的動作能力歩行訓練、関節可動域・筋力の回復、起き上がり・移乗の練習
作業療法士(OT)食事・着替え・家事など応用的動作と社会適応手指の細かい動作、自助具の活用、精神科領域や認知機能のリハビリ
言語聴覚士(ST)ことば・聞こえ・飲み込み(嚥下)失語症・構音障害の訓練、聴覚検査、摂食嚥下のリハビリ

ざっくり言えば、PTは「動く土台」、OTは「生活そのものの動作と心」、STは「話す・聞く・食べる」を担います。3職種とも医師の指示のもとでリハビリを行う点は共通です。STだけは扱う「ことば・嚥下」が専門的で、養成校の数も受験者数も他の2職種より少ないのが特徴です。

出典:日本理学療法士協会「理学療法士とは」(https://www.japanpt.or.jp/about_pt/)/厚生労働省 各国家試験の施行ページ(2025年時点)

養成ルート:どの学校に何年通うか

3職種いずれも、文部科学大臣または都道府県知事が指定した養成校を卒業することが国家試験の受験資格の基本です(理学療法士及び作業療法士法/言語聴覚士法)。学校の種類と年数は次のとおりです。

職種主な養成ルート修業年限
PT・OT4年制大学4年
PT・OT短期大学・専門学校3年または4年
ST4年制大学・3〜4年制専門学校3〜4年
ST一般の4年制大学卒業者向けの2年制課程(大学専攻科・大学院・専修学校など)2年

PT・OTは「養成校で3年以上学ぶ」のが要件で、4年制大学・3年制短大・3〜4年制専門学校から選べます。STも大学(4年)や専門学校(3〜4年)が基本ですが、すでに4年制大学を卒業した人は2年制の課程で受験資格を得られるルートがあるのが大きな特徴です。STの2年制課程でも、臨床実習を含む所定の専門単位(おおむね93単位)を修める点は4年・3年課程と共通ですが、外国語・保健体育などの一般教養はすでに大学で履修済みとして免除される場合が多く、専門科目を短期間に凝縮して学ぶイメージです。期間が短いぶん学習密度は高くなります。

💡すでに別のリハビリ資格を持っている場合

たとえば作業療法士の資格を持つ人がPTを目指す場合、養成校で2年以上学べば受験資格が得られる短縮ルートがあります(逆も同様)。すでに医療系の素地がある人は、自分の現有資格でルートが短くならないか養成校に確認しましょう。

出典:厚生労働省 理学療法士及び作業療法士法・同法施行規則、言語聴覚士法・同法施行規則(指定科目・単位)。詳細は各養成校の募集要項(2025年時点)。

最新の国家試験合格率(2025年/令和7年)

2025年(令和7年)に実施された直近の国家試験の結果は次のとおりです。下表の受験者数は実際に受験した人数で、厚生労働省の合格発表ページに大きく表示される「出願者数」とは別の数字です(出願したが受験しなかった人を除いた数)。数値は各種速報・集計に基づく目安です。

職種(試験回)受験者数合格者数合格率(全体)新卒既卒
PT(第60回)12,691人11,373人89.6%95.2%61.7%
OT(第60回)5,693人4,887人85.8%92.5%33.9%
ST(第27回)2,342人1,707人72.9%87.5%25.9%

全体合格率はPT・OTで85〜90%前後、STで70%台前半と高めに見えます。しかしこれは大半が在学中の新卒受験者だからであって、新卒と既卒の差は職種ごとに大きく異なります。新卒はいずれも87〜95%と高いのに対し、既卒(過年度卒)はPTが約62%、OTが約34%、STが約26%。とくにOT・STの既卒は新卒の半分以下に落ち込みます。「リハビリ職はみんな6割は受かる」というのは誤解で、OT・STは留年・卒業延期や再受験になると一気に厳しくなるのが実態です。STは全体合格率も3職種で最も低く、ここ数年はおおむね6割台後半〜7割台で推移しています(近年の第26〜27回は72%台で安定)。「現役で一度で受かる」ことが事実上の前提だと考えてください。

「既卒は6割受かる」は職種でまったく違う

既卒合格率はPTで約62%でも、OTは約34%、STは約26%と桁違いに低くなります。再挑戦組には現役で受からなかった層が含まれ、働きながらの再受験は対策時間の確保が難しいためです。とくにOT・STを目指す人は「ダメでも来年がある」と楽観せず、養成校在学中に確実に合格することを最優先に。それが結果的に学費と時間の両方を守る一番の近道です。

出典:PT-OT-ST.NET「理学療法士の合格率89.6%、作業療法士の合格率85.8%」(https://www.pt-ot-st.net/index.php/topics/detail/1711)/同「言語聴覚士の国家試験合格率72.9%」(https://www.pt-ot-st.net/index.php/topics/detail/1714)/厚生労働省 第60回理学療法士・作業療法士国家試験合格発表(https://www.mhlw.go.jp/general/sikaku/successlist/2025/siken08_09/about.html)・第27回言語聴覚士国家試験合格発表(https://www.mhlw.go.jp/general/sikaku/successlist/2025/siken21/about.html)。新卒・既卒別合格率は各種速報集計による目安。

学費の目安:トータルでいくらかかるか

学費は学校種別で大きく変わります。あくまで在学全期間の総額の目安として、次のレンジで考えておくと安全です(入学金・施設費・教科書・実習費・白衣などを含めた概算)。

学校種別修業年限学費総額の目安
国公立大学4年約250〜300万円
私立大学4年約500〜700万円
専門学校(昼間)3年約300〜500万円
専門学校(夜間)4年が中心昼間より年10〜20万円ほど安い傾向

国公立大学の授業料・入学金だけなら4年で約242万円(標準額)に収まりますが、これは最低ラインです。リハビリ系は実習期間が長く、教科書・実習費・白衣などの実費で初年度だけでも数十万円が別途かかるため、総額では250万円台〜300万円程度を見ておくのが現実的です。それでも私立大学(約500〜700万円。学校により800万円近くになる例も)に比べれば大幅に安く済みます。一方で受験倍率や立地の制約もあるため、「合格しやすさ」と「学費」のバランスで選ぶことになります。パンフレットの「学費」表記だけでなく、実費込みの総額を必ず確認しましょう。

💡奨学金・教育ローンの前提で設計を

多くの学生が日本学生支援機構(JASSO)などの奨学金を併用します。借りる前提で組むなら、卒業後の返済額が手取りに対していくらになるかを必ず試算してください。リハビリ職は初任給がそれほど高くないため、借りすぎは入職後の生活を圧迫します。返済設計は奨学金返済の記事もあわせてどうぞ。

出典:各養成校の学費公表資料および進学情報サイトの集計(2025年時点の目安)。国公立大学の標準授業料は年約53.6万円・入学金約28.2万円。実額は学校により異なります。

卒業後の手取りがいくらになるかをまず把握し、奨学金の借入額を決める判断材料に → 手取りシミュレーター

社会人・他職種からのルート

リハビリ職は社会人からの転身も多い分野です。基本は「もう一度、養成校に通い直す」ことになりますが、次のような工夫があります。

  • 夜間部のある専門学校を選ぶ:日中働きながら通う社会人に対応した夜間部があり、年間の学費もやや抑えめです。ただしPT・OTの夜間部は4年制が中心で、昼間部(3年)より修業年限が1年延びる点に注意。年あたりは安くても、総額と「在学が1年長引くぶんの収入減」を合わせると、必ずしも得とは限りません。
  • STの2年制課程:すでに4年制大学を卒業している社会人なら、ST養成の2年制課程で最短2年で受験資格に到達できます。学び直しの期間と費用を圧縮できる現実的な選択肢です。
  • 現有資格を活かす:介護福祉士など医療・福祉の実務経験は、学習内容や就職面で有利に働くことがあります(ただし受験資格の短縮は前述のPT⇄OTなど限られた組み合わせのみ)。
社会人の「数年間の収入減」を甘く見ない

社会人ルートで一番重いのは学費そのものより、在学中に働けない/働く時間が減ることによる収入減(機会費用)です。たとえば年収300万円の人が3年間フルに学業優先にすると、それだけで約900万円の収入を失う計算になります。専門学校(3年で約300〜500万円)の学費と合わせると、総コストは1,000万円規模になりうるのが現実です。家計が回るか、貯蓄・配偶者収入・奨学金で支えられるかを、入学前に冷静に試算してください。

3職種の進路の選び方

「どれを選ぶか」は適性と働き方で考えるのがおすすめです。判断材料を整理します。

  • 求人の多さ・つぶしの効きやすさ重視ならPT:養成校・有資格者数が最も多く、整形外科・回復期・訪問など職場の選択肢が広いのが利点。半面、有資格者が増え続けており、地域や職場によっては競争もあります。
  • 人の生活・心に幅広く関わりたいならOT:身体だけでなく精神科領域や認知症ケア、就労支援まで対象が広く、活躍の場が多様です。
  • 専門性で差別化したいならST:人数が少なく希少性が高い一方、国家試験の合格率は3職種で最も低め(とくに既卒は約26%)。ことば・嚥下という専門領域に強い関心がある人に向きます。
迷ったら「対象者像」で選ぶ

「歩けるように支えたい」ならPT、「その人らしい暮らしや作業を取り戻したい」ならOT、「もう一度話せる・食べられるを支えたい」ならST。日々向き合う相手と場面をイメージして選ぶと、入学後のミスマッチが減ります。可能ならオープンキャンパスや病院見学で現場を見てから決めましょう。

取得後の年収と「学費の回収」

気になるお金の出口です。3職種の給与水準は近く、いずれも医療職の中では突出して高いわけではないのが正直なところです。新人のうちは手取りが伸びにくく、夜勤がない職場では夜勤手当も付きません。一方で、求人が安定し全国どこでも働きやすい点、訪問リハビリや管理職・専門資格でのキャリアアップ余地がある点は強みです。

学費を「投資」と捉えるなら、借りた奨学金の総額と、入職後の手取りから返せるペースのバランスがすべてです。私立大学で600万円近く借り、初任給で月数万円を10年以上返すケースもあります。具体的な年収レンジや手取り、回収シミュレーションは、職種別にまとめた記事で確認してください。

将来の学費返済・ライフイベントまで含めて資金繰りを見通す → ライフプラン

まとめ

  • PTは「動作の土台」、OTは「生活動作と心」、STは「ことば・聞こえ・飲み込み」を担う別資格。
  • 養成ルートはPT・OTが大学4年/短大3年/専門3〜4年。STはこれに加え、一般大卒者向けの2年制課程がある。
  • 2025年の全体合格率は目安でPT89.6%・OT85.8%・ST72.9%。ただし既卒はPT約62%・OT約34%・ST約26%と職種差が大きく、OT・STは在学中の一発合格が現実的な前提。
  • 学費総額の目安は国公立大 約250〜300万円、私立大 約500〜700万円、専門3年 約300〜500万円。奨学金は返済前提で設計を。
  • 社会人ルートは学費より在学中の収入減(機会費用)が重く、学費と合わせ総コストは1,000万円規模になりうる。夜間部は安い反面、PT・OTでは年限が1年延びる点に注意。
  • 年収は医療職の中で突出はせず、学費の借り方と回収のバランスが肝心。

よくある質問

PT・OT・ST、いちばん就職しやすいのは?

有資格者数・養成校数ともにPTが最多で求人の選択肢も広く、その意味では就職先を見つけやすい職種です。ただし有資格者が増え続けているため、好条件の職場は地域や経験で差が出ます。STは人数が少なく希少性が高い反面、職場数自体も限られます。「就職しやすさ」だけでなく適性で選ぶことをおすすめします。

社会人で大学を出ています。最短で取れるのはどれですか?

一般の4年制大学を卒業している方なら、言語聴覚士(ST)の2年制課程が最短ルートになり得ます。PT・OTは原則3年以上の養成課程が必要です。ただし2年制課程は専門科目を短期間に凝縮して学ぶぶん学習密度が高く、しかもSTは既卒の合格率が約26%と低いため、現役で一度で受かる前提の覚悟が要ります。仕事との両立可否を含めて慎重に検討してください。

学費を抑えるにはどうすればいいですか?

第一に国公立大学は私立大学より総額が大幅に安くなります。次に専門学校の夜間部は昼間部より年10〜20万円ほど安い傾向ですが、PT・OTの夜間部は4年制が中心で年限が1年延びるため、総額・機会費用まで含めて比べてください。さらに日本学生支援機構の奨学金や、病院が学費を補助する「お礼奉公型」の奨学金制度もあります。後者は卒業後にその病院で一定年数働く条件が付くことが多いので、条件をよく確認してから利用しましょう。

働きながら国家資格は取れますか?

夜間部のある養成校を使えば、日中働きながら通う道はあります。ただし臨床実習はまとまった期間が必要で、その間は仕事の調整がほぼ必須です。完全に通信だけで取得できる制度はありません。在学中の収入減を見込んだ資金計画が前提になります。

国家試験はどのくらい難しいですか?

2025年の全体合格率は目安でPT89.6%・OT85.8%・ST72.9%。数字だけ見ると高めですが、これは大半が在学中の新卒受験者だからです。既卒(過年度卒)の合格率はPTで約62%、OTで約34%、STで約26%と、職種によって大きく差が開き、とくにOT・STは新卒の半分以下に落ちます。「在学中にしっかり対策して一度で受かる」のが標準ルートと考えてください。とくにSTは3職種で最も合格率が低く、入念な準備が必要です。


免責:本記事は2025年(令和7年)時点で確認できる一次情報・公開情報をもとにした一般的な進路情報です。学費・合格率・年収はいずれも目安であり、最新の制度・各養成校の募集要項・厚生労働省の発表を必ずご確認ください。合格率の新卒・既卒別の数値は各種速報集計に基づく目安です。資格取得や進学の最終判断はご自身の責任で行ってください。参照源:厚生労働省 第60回理学療法士・作業療法士国家試験/第27回言語聴覚士国家試験の合格発表ページ、PT-OT-ST.NET 合格速報、日本理学療法士協会、理学療法士及び作業療法士法・言語聴覚士法および同施行規則、各養成校の学費公表資料(2025年時点)。

監修・運営:黒田 律(くろだ りつ)

内科医・産業医(医師8年目)/投資家

地方の病院で内科診療を続けながら、産業医として「働く人の心身とお金」に向き合う医師。記事は税・制度などを公的な一次情報で確認し、医療・制度面を監修しています。運営者・編集方針について →