給与・手取り

リハビリ職(PT・OT・ST)の年収とキャリア
職場・資格・働き方で給料はどう変わる?

2026年6月12日 更新 / メディカルマネー編集部 / 監修:黒田律(内科医・産業医) / 初級者向け

理学療法士(PT)・作業療法士(OT)・言語聴覚士(ST)は、まとめて「リハビリ職」「セラピスト」と呼ばれます。同じリハビリの専門職でも、扱う対象も、働く場所も、そして年収の傾向も少しずつ違います。さらに、同じ資格を持っていても、急性期の病院で働くか、介護施設で働くか、訪問リハに出るかで、給料も生活リズムも変わってきます。

リハビリ職の年収は、医療職全体の中では「平均的〜やや控えめ」のゾーンに位置します。夜勤手当が乗りにくい日勤中心の職種なので、看護師のように夜勤で年収を伸ばすことが難しく、その代わり生活リズムは安定しやすい——という傾向があります。だからこそ、「どこで働くか」「どんな資格を足すか」「管理職を目指すか」といった選択が、長い目で見た年収に効いてきます。

この記事では、PT・OT・STの違いをおさえたうえで、職場別の年収の目安(レンジ)、認定・専門資格、管理職や独立、年収を上げる現実的な方法、そして気になる需給の動向まで、初級者向けにやさしく整理します。年収はすべて「目安・レンジ」として示します。これからリハビリ職を目指す方は、資格の取り方や養成校のルートをまとめた リハビリ職(PT・OT・ST)になるには もあわせて読むと、進路と将来の収入像をセットでイメージしやすくなります。

この記事のゴール

PT・OT・STの違いと、職場ごとの年収の目安をつかみ、「自分はどこで働き、何を足せば年収とやりがいのバランスが取れるか」を考えられるようになること。具体的な手取りは 手取りシミュレーター で、転職前後の比較は 転職の手取り比較 で確認できます。

PT・OT・STはどう違う?

3職種はどれも国家資格で、医師の指示のもとリハビリテーションを担います。ざっくり言うと、PTは「動く」、OTは「暮らす」、STは「話す・食べる・聞く」を支える専門職です。

職種主に支えるもの対象のイメージ
理学療法士(PT)立つ・歩く・座るなど基本動作脳卒中・骨折後の歩行訓練、運動療法
作業療法士(OT)食事・着替え・家事など生活動作、こころ手の機能回復、認知症・精神科領域も
言語聴覚士(ST)話す・聞く・飲み込む(嚥下)失語症・構音障害、嚥下訓練、小児の言語発達

国家試験の合格者の累計人数はPTが最も多く(累計20万人超)、OTがおおむねその半分前後、STは最も少なく(数万人規模)という構成です。STは人数が少ないぶん、嚥下や小児領域など専門性の高い場面で重宝されやすいという側面があります。

💡ポイント

年収の傾向は3職種で大きくは変わりません。厚生労働省「賃金構造基本統計調査」をもとにすると、PT・OT・STとも平均年収の目安はおおむね420〜430万円前後に集まります。職種そのものより、「どの職場で」「経験何年で」「役職があるか」のほうが年収への影響は大きい、と考えておくのが現実的です。職種間の比較は 職種別の年収と手取り もあわせてどうぞ。

職場別の年収の目安

リハビリ職の年収は、職種より職場(働く場所)で動きやすいのが特徴です。下のグラフは、PT・OT・STに共通する代表的な職場ごとの年収の目安(レンジ)を並べたものです。同じ職場でも経験年数・施設規模・地域・賞与で上下するので、考え方を示すための参考レンジとして見てください。

訪問リハ
約430〜560万
介護(老健/デイ)
約400〜500万
回復期病院
約400〜470万
急性期病院
約390〜460万
クリニック
約360〜440万
スポーツ/小児
約340〜450万

※あくまで目安です。年収は経験年数・施設規模・地域・賞与水準・歩合の有無などで大きく変動します。バーの長さは訪問リハの上限を基準にした相対比較で、同じ職場でも個人差が出ます。考え方を示すための参考レンジとしてご覧ください。

急性期・回復期の病院

病院はリハビリ職の王道の職場です。急性期は発症・術後すぐの患者を担当し、リスク管理や急変対応の経験が積めます。回復期リハビリ病棟は、365日体制で集中的にリハビリを行う施設が多く、症例数を多くこなせてセラピストとしての土台が固まるのが魅力です。給与は安定的ですが、夜勤がほぼないぶん、年収は爆発的には伸びにくい(目安390〜470万円)のが正直なところです。賞与がしっかり出る病院かどうかで年収は意外と変わります。

クリニック(整形外科など)

整形外科クリニックなどの外来リハビリは、日勤中心で生活リズムが安定しやすい職場です。一方で、夜勤・当直がなく賞与も控えめな院が多いため、年収は目安360〜440万円のレンジに収まりやすい傾向があります。少人数の職場が多く、院長の方針が働きやすさを大きく左右します。

介護(老健・デイ・特養)

介護老人保健施設(老健)やデイケア・デイサービス、特養などの介護領域は、リハビリ職の活躍の場が広がっている分野です。生活期のリハビリが中心で、利用者の「暮らし」を支えます。施設によっては処遇改善加算(介護職員等処遇改善加算など)の対象になり、手当が上乗せされることもあります(対象や金額は施設の体制次第です)。年収の目安は400〜500万円。日勤中心ながら、病院より給与水準が高めの施設もあります。

訪問リハビリ

利用者の自宅へ出向く訪問リハは、近年需要が伸びており、年収も高めに出やすい職場です。訪問件数に応じたインセンティブ(歩合)がある事業所も多く、件数をこなせる人は目安430〜560万円と、病院勤務より高い水準も狙えます。その代わり、移動の負担や、利用者宅での自律的な判断・責任が求められます。

スポーツ・小児などの専門分野

スポーツ現場(チームトレーナー等)や小児発達支援、自費リハビリなどは、やりがいと専門性が高い一方、収入は二極化しやすい分野です。安定雇用が少なく、駆け出しは年収が控えめになりがちですが、実績を積んで指名や自費メニューが増えれば収入を伸ばせる世界です。情熱で選ぶ人が多い領域でもあります。

注意

求人票の「月給○○万円」だけで判断しないこと。賞与の有無・月数、処遇改善手当、住宅手当、退職金制度まで含めて見ないと、年収では逆転することがよくあります。とくに訪問リハの「高収入」は歩合込みのケースがあり、件数が伸びない月は下がることも。額面ではなく手取り・年額で比べるのが鉄則です。

認定・専門資格でキャリアを伸ばす

リハビリ職は、基礎資格(PT・OT・ST)を取ったあとに専門性を上乗せできるのが特徴です。資格そのものが直接大きな手当につながるとは限りませんが、転職時の評価・配属・指名に効いてくることが多く、長い目で見たキャリアの武器になります。

分野代表的な資格・制度の例
PTの専門性認定理学療法士・専門理学療法士(日本理学療法士協会)
OTの専門性認定作業療法士・専門作業療法士(日本作業療法士協会)
STの専門性認定言語聴覚士(摂食嚥下障害・失語/高次脳機能障害 など)
領域横断3学会合同呼吸療法認定士、福祉住環境コーディネーター、ケアマネジャー(介護支援専門員)など
💡ポイント

「資格を取れば年収が上がる」というより、「行きたい分野で評価される資格を、その分野に進む前後で取る」のが効率的です。たとえば嚥下に強くなりたいSTなら認定言語聴覚士、介護・在宅で動きたいならケアマネ資格、というように、目指す職場と資格をセットで考えると無駄がありません。

管理職・独立という選択肢

リハビリ職で年収を大きく動かす道のひとつが、管理職(リハビリ科長・部門長・主任)です。役職手当に加えて、スタッフのマネジメント・シフト管理・他職種との調整を担う立場になります。施設規模にもよりますが、管理職になると年収500万円台〜600万円前後を目指せるケースもあります(あくまで目安で、施設や役職の重さで幅があります)。臨床から少し離れることに葛藤を感じる人もいるため、向き不向きはあります。

もうひとつが独立・開業です。リハビリ職は医師のように医療機関を単独で開設はできませんが、自費リハビリ施設の運営、訪問看護ステーション(リハ職が機能訓練を担う形)、デイサービス、フリーランスのトレーナーといった道があります。うまくいけば収入の上限は外せますが、集客・経営のリスクを自分で背負うことになります。開業のお金の考え方は クリニック開業の資金計画 の発想が一部参考になります。

注意

独立は「年収が上がる選択」ではなく「年収が上下する選択」です。会社員時代の年収を超えるには、空いた時間ぶんの集客と単価設計が必要で、社会保険・税金も自分で管理することになります。勢いで辞める前に、生活防衛資金を厚めに確保しておきましょう(生活防衛資金の作り方)。

年収を上げる現実的な5つの方法

夜勤手当が乗りにくいリハビリ職が、無理なく年収を上げるための現実的な打ち手を整理します。どれか一つではなく、組み合わせるのがコツです。

  1. 給与水準の高い職場へ移る:同じ経験年数でも、施設・法人によって年収は数十万円単位で変わることがあります。賞与月数と手当の手厚い職場を選ぶだけで底上げできます。
  2. 訪問リハ・介護分野を視野に入れる:需要が伸びており、歩合や処遇改善で病院より高めになりやすい領域です。
  3. 管理職を目指す:役職手当はインパクトが大きく、年収の天井を引き上げます。
  4. 専門資格・領域を深める:指名・配属・転職時の評価につながり、長期的に効きます。
  5. 副業・自費メニュー:本業に支障のない範囲でのセミナー講師、執筆、週末トレーナーなど。副業の所得は 20万円ルール など税の扱いに注意。

このうち、もっとも手堅いのは「転職での底上げ」です。ただし額面が上がっても、手当の中身や社会保険・住民税の関係で手取りの伸びは思ったほどでないこともあります。移る前に必ず手取りベースで比べましょう。年収アップの考え方は 年収を上げる5つの方法(看護師向けですがリハ職にも応用できます)も参考になります。

転職で年収・手当が変わると、手取りはどう動く? 現職とオファーを並べて比較 → 転職の手取り比較

PT・OT・STの需給はどうなっている?

年収を考えるうえで避けて通れないのが需給です。PT・OTは養成校が増えた時期に有資格者が大きく増え、厚生労働省の検討会でも将来的に供給が需要を上回る見通しが示されています。これは、新卒の初任給や若手の伸びが頭打ちになりやすい一因とされています。一方で、高齢化により介護・在宅・回復期のリハビリ需要は伸びており、働く「場所」は広がっています。

STは有資格者が相対的に少なく、嚥下・小児など専門領域でのニーズが強いため、人数の希少性が一定の追い風になりやすいと言われます。総じて言えば、リハビリ職は「資格を持っているだけ」で高給というより、需要の伸びる分野(介護・在宅・専門領域)に身を置けるかが、これからの年収を分けると考えておくとよいでしょう。

これからの目線

供給が増える時代だからこそ、「替えのきかない強み」を一つ持つことが効いてきます。需要が伸びる場所(在宅・介護・回復期)と、自分の専門(嚥下・呼吸・小児・スポーツなど)を掛け合わせると、年収もやりがいも安定しやすくなります。

まとめ

  • PT・OT・STは「動く・暮らす・話す/食べる」を支える国家資格。年収の傾向は3職種で大差なく、平均の目安はおおむね420〜430万円前後
  • 年収は職種より職場で動きやすい。訪問リハ・介護はやや高め(目安400〜560万円)、病院は安定(390〜470万円)、クリニックやスポーツ/小児は控えめ〜二極化。
  • 夜勤手当が乗りにくいぶん、職場選び・専門資格・管理職・需要の伸びる分野が年収を分ける。
  • 独立は「上がる」ではなく「上下する」選択。生活防衛資金を厚めに。
  • 需給はPT・OTで供給増の見通し、STは相対的に希少。需要が伸びる場所×自分の専門を掛け合わせるのが、これからの強い戦略。
  • 年収は必ず額面でなく手取り・年額で比較を。手取りシミュレーター転職の手取り比較で自分の数字を確かめるところから。

「いまの年収は相場に合っているだろうか」と感じたら、職場を変えるのも現実的な選択肢です。職種別の転職サービスは 転職サイトの選び方 で中立に比較しています。


本記事の年収は厚生労働省「賃金構造基本統計調査」等をもとにした全国の目安・レンジで、施設・経験年数・地域・賞与により実際の金額は異なります。2026年(令和8年)時点の制度にもとづく一般的な情報であり、特定の転職・税務・投資に関する個別の助言ではありません。税・社会保険の制度は改正される場合があります。重要な判断の際は、求人票の詳細・一次情報(厚生労働省、各職能団体)や専門家にご確認ください。

監修・運営:黒田 律(くろだ りつ)

内科医・産業医(医師8年目)/投資家

地方の病院で内科診療を続けながら、産業医として「働く人の心身とお金」に向き合う医師。記事は税・制度などを公的な一次情報で確認し、医療・制度面を監修しています。運営者・編集方針について →