給与・手取り

視能訓練士(ORT)の年収・手取り・働き方
眼科の検査・視能訓練・ロービジョンケアを支える国家資格

2026年6月19日 更新 / メディカルマネー編集部 / 監修:黒田律(内科医・産業医) / 初級者向け

視能訓練士(ORT=Orthoptist)は、眼科で目の検査や視能訓練、ロービジョンケアを担う国家資格の専門職です。視力・眼圧・視野・眼底の検査から、斜視・弱視の訓練、見えにくさを抱える人の生活支援まで、眼科医療を裏側から支えています。高齢化で白内障・緑内障・加齢黄斑変性などの患者が増え、眼科クリニックの数も伸びているため、需要が底堅い職種としても知られています。

この記事では、視能訓練士の年収・手取りの目安を、厚生労働省「賃金構造基本統計調査」や日本視能訓練士協会の調査などの一次情報をもとに整理します。あわせて、額面と手取りの違い、眼科クリニックと病院での働き方の差、需要と求人の状況、年収を上げる現実的な方法までを通しで見ていきます。まずは前提を一つ押さえておきましょう。

視能訓練士には専用の統計区分が乏しい

厚労省の賃金統計には「視能訓練士」単独の集計がなく、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士・視能訓練士をまとめた区分で公表されます。このため本記事の年収は、関連区分や専門団体の調査・求人水準からの“目安”です。実額は勤務先・地域・経験で動くため、断定的な数字としては受け取らないでください。

視能訓練士の年収はどのくらい?

厚生労働省「賃金構造基本統計調査」(令和6年/2024年)では、視能訓練士を含む「理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、視能訓練士」の合算区分で、平均年収はおおむね440万円前後とされています。これはリハビリ職などと一緒に集計された数字で、視能訓練士単独の水準とは必ずしも一致しません。

一方、職能団体である日本視能訓練士協会の実態調査(2020年)では、視能訓練士の平均年収は、非正規も含めた全体で約380万円正規雇用(常勤)に絞ると約420万円という結果が示されています。これらを総合すると、視能訓練士(常勤フルタイム)の年収はおおよそ390〜450万円がボリュームゾーン、経験・役職・勤務先によって350万円台から600万円前後まで幅がある、と捉えるのが実態に近い目安です。

新卒(経験0年・20代前半)の初任給は、賃金統計の関連区分で月給24万円台が目安とされ、年収にすると300万円前後からのスタートになる人が多い傾向です。そこから経験を重ね、30代で400万円台、40代以降は役職や勤務先しだいでさらに伸びていく、という伸び方が一般的です。

💡「合算データ」と「実態調査」は分けて読む

厚労省データ(約440万円)はリハビリ職との合算、協会の実態調査は視能訓練士に絞った数字(全体約380万円・正規約420万円)です。両者がズレるのは自然なこと。どちらか一方を「視能訓練士の正確な年収」と断定せず、レンジの目安として併せて見るのが正しい読み方です。

勤務先別の年収目安と働き方

視能訓練士の主な勤務先は、眼科クリニック(診療所)と病院(一般病院・大学病院)です。検診機関や眼鏡・コンタクト関連企業、研究・教育機関で働く人もいます。勤務先によって年収水準と仕事の幅が変わります。いずれも全国・常勤フルタイムを想定したおおよその目安レンジです。

勤務先年収の目安レンジ特徴
眼科クリニック(診療所)約350〜480万円視能訓練士の代表的な職場。検査の比重が大きく日勤中心。残業・夜勤が少なく働きやすい一方、昇給は緩やかなことも。
一般病院約380〜520万円手術前後の検査や多様な疾患に関わり経験を積みやすい。役職・諸手当で上振れ。
大学病院・基幹病院約420〜600万円規模が大きく給与テーブルが整い、年収はやや高め。専門性・教育・研究にも関われる。
検診・企業・教育など約350〜550万円健診の眼科検査、眼鏡・コンタクト関連、養成校の教員など。幅が大きい。

※厚生労働省「賃金構造基本統計調査」(令和6年)の関連区分、日本視能訓練士協会の調査、および求人水準をもとにした目安レンジです。地域・施設規模・経験・役職で大きく変わります。

眼科クリニック

視能訓練士がもっとも多く働く職場です。視力・眼圧・視野・眼底撮影などの検査が中心で、日勤のみ・夜勤や当直がほぼないため、生活リズムを整えやすいのが大きな魅力です。一方で小規模なクリニックでは昇給の幅が緩やかなこともあり、年収を伸ばすには経験を活かした転職や、検査スキル・患者対応の幅を広げる工夫が効いてきます。

病院・大学病院

一般病院や大学病院では、白内障・緑内障・網膜疾患の手術前後の検査、斜視・弱視の精密検査、ロービジョンケアなど、関わる業務の幅が広がります。給与テーブルが整っている分、勤続とともに着実に年収が上がりやすく、役職に就けば一段上振れします。大学病院では教育・研究に関わる機会もあり、専門性を高めたい人に向きます。

手取りの考え方|額面の約8割が目安

勤務先別に示した年収はすべて「額面」です。実際に口座へ入る手取りは、ここから社会保険料と税金が引かれた金額になります。引かれるのは次の5つで、これは視能訓練士に限らず全職種で共通の仕組みです。

  1. 健康保険料(40歳以上は介護保険料も上乗せ)
  2. 厚生年金保険料
  3. 雇用保険料
  4. 所得税
  5. 住民税

結果として、手取りは額面のおよそ75〜80%に落ち着きます。「ざっくり8割」と覚えておくと見積もりが速くなります。引かれるお金の中身は 「手取りはなぜ額面の8割なのか」 で1項目ずつ解説しています。

額面年収(働き方の例)手取り年収の目安月あたり(賞与込みを12等分)
約350万円(クリニック・若手)約280〜290万円約23〜24万円
約420万円(視能訓練士の常勤の目安水準)約330〜340万円約28万円
約500万円(病院・経験者)約390〜400万円約33万円
約580万円(大学病院・役職)約450〜460万円約38万円

※単身・40歳未満を想定したおおよその目安です。扶養家族がいると控除が増えて手取りは上がります。地域・手当構成で変わります。

「額面が高い=手取りも比例して高い」ではない

年収が上がると所得税・住民税・社会保険料も増えるため、手取りは額面ほどには増えません。勤務先を比べるときは額面だけでなく、必ず手取りベースで比較しましょう。賞与の実績・残業の有無・退職金まで含めると、見え方が変わることもあります。

自分の年収を入れて、税・社会保険を引いた手取りを数字で確かめましょう → 手取りを計算 →

視能訓練士になるには|国家資格と養成課程

視能訓練士は、年に1回(例年2月)の国家試験に合格して取得する国家資格です。受験資格を得るルートは主に次のとおりです。

  • 高校卒業後、養成施設(3年制以上)で学ぶ:文部科学大臣の指定する学校、または都道府県知事の指定する養成所(専門学校・短大・4年制大学など)で、3年以上、指定の知識・技能を修得する。
  • 大学・短大などで指定科目を履修後、1年制の養成課程で学ぶ:大学・短大・看護師等の養成機関で指定科目を修めた人が、1年以上の養成課程を経て受験資格を得るルート。

養成校は全国に複数あり、4年制大学と3年制専門学校では学費・在学年数・カリキュラムの幅が異なります。国家試験の合格率は例年おおむね90%台と高めですが、これは指定の養成課程で計画的に学んだ受験者が中心のためです。国家資格を持つ専門職であることが、安定した需要と一定の給与水準の土台になっています。資格取得後の学び方や検査スキルの幅は、勤務先選びや年収にも少しずつ効いてきます。

💡需要は底堅い|眼科の増加と高齢化

白内障・緑内障・加齢黄斑変性など、加齢に伴う目の疾患は高齢化とともに増えています。眼科クリニックの数も伸びており、検査を担う視能訓練士の求人は全国的に底堅いのが特徴です。日勤中心で働きやすく、ブランクからの復職・地方での就業もしやすい職種とされています。

視能訓練士が年収を上げる現実的な方法

視能訓練士は、看護師のように夜勤手当で年収が大きく動く職種ではありません。だからこそ、年収を上げるには勤務先・役職・転職という3つのレバーを意識するのが現実的です。

1. 勤務先のレンジを上げる

小規模クリニックから、給与テーブルの整った病院・大学病院・基幹病院へ移ると、年収のレンジそのものが上がることがあります。「働きやすさ(日勤・残業少)」と「年収・キャリアの伸びしろ」のどちらを優先するかで、最適な勤務先は変わります。

2. 経験・専門性を積み、役職に就く

斜視・弱視の精密検査、ロービジョンケア、手術関連検査など、対応できる検査の幅と精度を広げることは、評価と転職時の交渉力につながります。検査主任・部門のリーダーなど役職に就けば、手当と基本給の両方で年収が上がりやすくなります。

3. 手取りと総合条件で転職する

視能訓練士は資格に裏打ちされた需要があり、転職しやすい職種です。ただし大切なのは「提示された額面」ではなく「手取りと総合条件」。提示年収が高くても、賞与が低い・残業が多い・退職金がないといった違いで、実際に残るお金は変わります。年収・賞与・残業・勤務時間・通勤・退職金まで含めて、手取りベースで比べると後悔しにくくなります。職種別の転職サービスの選び方は 転職サイトの選び方 で中立に整理しています。

転職時のチェックリスト

提示年収に賞与・残業代が含まれているか/賞与の実績(◯か月分)/月の残業時間・夜間や休日の検査対応の有無/役職手当の有無/退職金制度/通勤・勤務地。これらをそろえて初めて、勤務先どうしを手取りで正しく比べられます。

他の医療技術職との比較

視能訓練士と同じく、検査・機器・国家資格を軸にする医療技術職には、診療放射線技師・臨床検査技師・臨床工学技士などがあります。当直・夜勤の有無や手当の構造が職種ごとに異なり、年収の動き方にも差が出ます。視能訓練士は日勤中心で働きやすい一方、夜勤・当直のある職種は手当で年収が上振れしやすい、といった違いがあります。

具体的な水準は、診療放射線技師・臨床検査技師の年収と働き方臨床工学技士(ME)の年収・手取り でそれぞれ整理しています。職種をまたいで比べたい場合は 職種別の年収と手取り もあわせてどうぞ。

まとめ

  • 視能訓練士(常勤フルタイム)の年収はおおよそ390〜450万円がボリュームゾーン(経験・役職で350万円台〜600万円前後)。専用の統計区分が乏しく、関連区分・専門団体調査・求人水準からの目安。
  • 厚労省データ(リハビリ職との合算で約440万円)と協会の実態調査(全体約380万円・正規約420万円)は分けて読む。
  • 勤務先別では、眼科クリニックは日勤中心で働きやすく、病院・大学病院は年収・キャリアの伸びしろが大きい傾向。
  • 手取りは額面の約75〜80%。勤務先の比較は必ず手取りベースで。
  • 需要は高齢化と眼科の増加を背景に底堅い。年収を上げる現実的な方法は「勤務先のレンジを上げる」「専門性・役職」「手取りで比べて転職」の3つ。

勤務先別の平均はあくまで出発点です。手取りシミュレーター に自分の数字を入れて、「実際にいくら残るのか」を確かめるところから始めてみてください。


出典:厚生労働省「賃金構造基本統計調査(令和6年)」 https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/kouzou/z2024/index.html / 厚生労働省「視能訓練士国家試験の施行」 https://www.mhlw.go.jp/kouseiroudoushou/shikaku_shiken/shinoukunrenshi/ / 公益社団法人 日本視能訓練士協会 https://www.jaco.or.jp/

本記事の年収は、厚生労働省「賃金構造基本統計調査」(令和6年)の関連区分や日本視能訓練士協会の調査(2020年実態調査)、求人水準をもとにした全国の目安レンジで、2026年(令和8年)の税・社会保険制度にもとづく一般的な情報です。視能訓練士には専用の統計区分が乏しいため、数値は断定ではなく目安としてお示ししています。実際の給与・手取り・手当は勤務先や個々の状況で異なり、税・社会保険の制度は改正される場合があります。本記事は税務・労務・投資の個別助言ではありません。正確な金額や最新の制度は、勤務先・一次情報(厚生労働省・日本視能訓練士協会等)・専門家にご確認ください。

監修・運営:黒田 律(くろだ りつ)

内科医・産業医(医師8年目)/投資家

地方の病院で内科診療を続けながら、産業医として「働く人の心身とお金」に向き合う医師。記事は税・制度などを公的な一次情報で確認し、医療・制度面を監修しています。運営者・編集方針について →