転職とお金

看護師の転職理由ランキングと
後悔しない転職のしかた

2026年6月9日 更新 / メディカルマネー編集部 / 監修:黒田律(内科医・産業医) / 中級者向け

「もう辞めたい」――夜勤明けのぼんやりした頭で、そう思った経験のある看護師は少なくないはずです。人間関係に疲れた、給料が割に合わない、夜勤続きで体がもたない、結婚や出産で今の働き方が続けられない。理由はさまざまでも、転職を考えるきっかけはどこの職場にもあります。

ただ、転職そのものは「良いこと」でも「悪いこと」でもありません。問題は、勢いだけで辞めてしまって後悔するか、理由を整理して納得して動けるかです。実際、「人間関係が嫌で辞めたのに、転職先でも同じことが起きた」「年収が上がると思ったのに、夜勤が減って手取りはむしろ下がった」という後悔は、準備不足から生まれます。

この記事では、看護師によくある転職理由を整理したうえで、「後悔しない転職」の進め方を5つのステップで解説します。あわせて、多くの人が陥りやすい失敗とその回避法、結婚・出産などライフイベント別の動き方も、現場目線でまとめます。

この記事のゴール

自分の「辞めたい」の正体(給与なのか、人間関係なのか、労働環境なのか)を言葉にして整理できるようになること。そのうえで、勢いで辞めず、在職中に手取りベースで複数の求人を比較し、納得して次の一歩を決められるようになることです。

看護師が転職を考える主な理由

看護師の転職理由は人それぞれですが、現場でよく聞く声を整理すると、いくつかの典型的なパターンに分かれます。多くの場合、理由はひとつではなく、複数の不満が積み重なって「辞めたい」に変わっていくのが実情です。

よくある転職理由具体的な中身
人間関係先輩・同僚との関係、いじめ・パワハラ、医師や他職種との連携のストレス
給与・待遇仕事量に給料が見合わない、昇給が乏しい、賞与や手当が少ない
労働環境(夜勤・残業)夜勤の回数が多い、サービス残業、休みが取れない、人手不足
ライフイベント結婚・出産・育児・引っ越し・家族の介護で働き方を変える必要
キャリアアップ専門・認定看護師を目指す、別の診療科を経験したい、スキルの幅を広げたい
心身の負担体力的なきつさ、精神的な疲弊、燃え尽き、健康を崩した
方針・看護観の不一致職場の方針や看護のやり方に納得できない、理想とのギャップ

下のグラフは、これらの理由がどのくらい多く聞かれるかのおおまかなイメージです。人間関係・給与・労働環境がとくに多く挙がりやすく、ライフイベントも一定数を占める、という傾向を示しています。

人間関係
非常に多い
給与・待遇
多い
労働環境
多い
ライフイベント
一定数

※あくまで一般的な傾向の目安であり、公的な確定順位ではありません。割合は調査・年代・職場によって変わります。考え方を示すためのイメージとしてご覧ください。

💡ポイント

大切なのは「ランキングの順位」そのものではなく、自分の理由がどれに当てはまるかです。同じ「辞めたい」でも、原因が給与なのか人間関係なのかで、転職で解決するのか、別の手段で解決するのかが変わります。まずは自分の不満を分解してみましょう。

「人間関係」の悩み — 最も多い理由の一つ

看護師の転職理由として、もっとも多く挙がりやすいのが人間関係です。看護師の仕事はチームで動くため、先輩・同僚・医師・他職種との関わりが密で、一度こじれると毎日のストレスに直結します。プリセプターとの相性、ベテラン看護師との関係、部署特有の雰囲気――どれも「自分ひとりの努力」では変えにくい部分があります。

ただし、人間関係を理由に転職するときは注意も必要です。人間関係の問題は、転職先でゼロにはならないからです。新しい職場にも別の人間関係があり、合う・合わないは入ってみないと分かりません。だからこそ、「今の職場の何が問題なのか」を具体的にしておくことが、転職先選びの軸になります。

人間関係の悩み転職前に考えたいこと
特定の個人との関係部署異動で解決できないか。相手が異動・退職する可能性は
部署全体の雰囲気同じ病院の別病棟は違うか。職場ぐるみの問題か
ハラスメント記録を残し、相談窓口・上司へ。証拠は転職後も身を守る
組織風土そのものこれは転職で環境を変える価値が大きい
注意

ハラスメントや心身の不調がある場合は、「我慢して続ける」ことが正解とは限りません。健康を損なう前に距離を取る判断も大切です。ただし、感情がピークの時ほど冷静な比較が難しくなります。辞める決断と、次をどう選ぶかは、いったん切り分けて考えましょう。

「給与・待遇」の不満 — まず手取りで現状把握を

「仕事のきつさに給料が見合わない」という不満も、転職理由として非常に多いものです。ただ、給与を理由に動くなら、最初にやるべきは現状の「手取り」を正確に把握することです。額面の月給や年収だけを見ていると、転職で損をすることがあります。

看護師の収入は、基本給に加えて夜勤手当・各種手当・賞与が大きく影響します。とくに夜勤手当は収入インパクトが大きく、「年収は上がったのに、夜勤が減って手取りは下がった」という逆転が起こりがちです。まずは 看護師の年収診断 で今の自分の立ち位置を確認し、職種別の年収と手取り で相場観をつかんでおくと、求人の数字を冷静に読めます。

見るべき項目なぜ大事か
基本給賞与・退職金・残業単価の基礎になる。額面の月給より重要
夜勤手当・回数収入を大きく左右。回数が減れば年収も下がる
賞与(何か月分か)年収差の主因。月給が同じでも賞与で数十万円変わる
手取り(額面の約8割)社会保険・税を引いた実際の入金額で比べる
手取りで比べるクセをつける

求人票の「月給◯◯万円」は、夜勤手当や賞与の前提がバラバラです。手取りはおおむね額面の8割が目安。なぜ8割なのかは 手取りはなぜ額面の8割なのか で確認できます。複数の求人を同じ物差し(手取り+夜勤構成+賞与)で並べれば、「本当に得な転職か」が見えてきます。

「労働環境(夜勤・残業)」とライフイベント

夜勤の多さ、サービス残業、慢性的な人手不足――労働環境への不満も根強い転職理由です。とくに夜勤は、収入と引き換えに生活リズムや健康を削る面があり、年齢を重ねるほど負担が増していきます。「日勤だけにしたい」「夜勤の回数を減らしたい」というニーズは、世代を問わず多く聞かれます。

そしてもう一つ大きいのがライフイベントです。結婚・出産・育児・配偶者の転勤・家族の介護――ライフステージの変化は、これまでの働き方を見直す自然なタイミングになります。これは「不満からの転職」とは性質が違い、前向きな働き方の調整として捉えるのがよいでしょう。

ライフイベント多い働き方の調整あわせて確認したいこと
結婚夜勤回数を減らす、生活リズムを合わせる世帯での手取り・扶養の考え方
妊娠・出産産休・育休を取得、復帰後に時短産休育休のお金、復帰先の体制
育児期日勤常勤・パートへ、夜勤なしの職場「年収の壁」と保育の両立
復職ブランク後にパート・外来から再開復職支援研修、段階的な戻し方

夜勤を減らす・日勤中心に変えると、収入は下がる方向に動きます。だからこそ、働き方の選択肢を「手取りと保障」で並べて考えることが大切です。常勤・パート・派遣・外来など、それぞれのメリットとお金の違いは 看護師の働き方とお金 で詳しく整理しています。夜勤手当そのものの税・社会保険の扱いは 夜勤手当・当直手当の税金と社会保険 もあわせてどうぞ。夜勤から離れたい人の選択肢としてよく挙がる美容クリニックについては、美容看護師の年収・転職の現実 で給与の仕組みやメリット・デメリットを整理しています。

💡ポイント

ライフイベントによる転職は「辞めたいから」ではなく「続けるために働き方を変える」発想です。退職一択ではなく、同じ職場での部署異動・時短・夜勤免除という選択肢が使えないかも、まず確認してみましょう。

後悔しない転職の5ステップ

ここからが本題です。転職して「動いてよかった」と思えるか、「やっぱり前のほうが…」と後悔するかは、進め方で大きく変わります。次の5ステップを順番に踏むことで、勢いや感情に流されない転職ができます。

ステップやること
① 理由の整理不満の正体を分解(給与か/人間関係か/環境か/ライフイベントか)
② 現職で解決できないか異動・時短・夜勤免除・上司への相談で解消できないか検討
③ 在職中に動く収入の空白を避ける。情報収集・応募は辞める前に
④ 手取りで比較複数の求人を「手取り+夜勤構成+賞与」で並べる
⑤ 納得して決める勢いではなく、条件と理由が合致したら決断

① 転職理由を整理する(不満の正体をつかむ)

まず、自分の「辞めたい」を紙に書き出して分解します。「なんとなく嫌」のままでは、転職先選びの軸が定まりません。不満が給与なのか、人間関係なのか、労働環境なのか、ライフイベントなのかをはっきりさせると、「転職で解決すること」と「転職しても変わらないこと」が見えてきます。給与が主因なら手取りの比較が、人間関係なら職場の風土や規模が、軸になります。

② 現職で解決できないか検討する

意外と見落とされがちですが、転職せずに解決できる不満もあります。人間関係なら部署異動、夜勤がつらいなら夜勤回数の相談や日勤常勤への変更、育児なら時短勤務――今の職場の制度で対応できないか、上司や人事に相談する価値はあります。転職には時間も労力もかかります。「今の職場で解決できないか」を一度通ってから動くと、後悔が減ります。

③ 在職中に動く(収入の空白を避ける)

原則として、次が決まるまで現職は辞めないのが鉄則です。先に辞めてしまうと、収入が途絶え、焦りから条件の悪い職場に飛びついてしまいがちです。在職中なら、心の余裕を持って比較・交渉ができます。退職のタイミングや、辞めたあとに必要になる社会保険・住民税の手続きは 退職後の社会保険手続き と連携して、計画的に進めましょう。

④ 複数の求人を手取りで比較する

1社だけ見て決めるのは危険です。最低でも複数の求人を、同じ物差しで並べて比べます。物差しは「額面の年収」ではなく、手取り・夜勤の回数・賞与の月数・休日数です。求人の探し方や、自分に合う転職サイトの選び方は 転職サイトの選び方 を、手取りベースの試算は下のツールを使うと比較がはかどります。

⑤ 納得して決める

最後は、整理した理由(①)と、比較した条件(④)がかみ合うかを確認して決断します。「人間関係が理由だったのに、給料だけ見て決めていないか」「夜勤を減らしたいのに、夜勤前提の年収で釣られていないか」。理由と条件が一致して初めて、後悔のない転職になります。勢いで決めない――これが最後の砦です。

転職で手取りがどう変わるか試算 → 転職の手取り比較ツール

やりがちな失敗と回避法

準備不足の転職には、いくつかの「あるある失敗」があります。先に知っておけば、同じ落とし穴を避けられます。

やりがちな失敗何が起きるか回避法
感情的な勢い退職次が未定のまま辞め、焦って妥協在職中に動く。決断と退職を切り分ける
年収だけで決める夜勤・手取りを見ず、実入りが減る手取り+夜勤構成+賞与で比較
1社だけで決める比較対象がなく、相場を見誤る複数の求人を同じ物差しで並べる
ブランクの放置離職が長引き、復職のハードルが上がるパート・外来・研修で段階的に戻す
「勢い退職」がいちばん危ない

夜勤明けの疲れや、嫌なことがあった直後の「もう辞める!」は、誰にでも起こります。ですが、次が決まる前の退職は、収入の空白と焦りを生み、結果的に条件の悪い職場へ飛び込む原因になりがちです。どうしても今すぐ離れたい事情(ハラスメント・健康悪化)がある場合を除き、まずは在職したまま情報収集から始めましょう。辞表は、次が決まってからでも遅くありません。

もう一つ補足すると、ブランク(離職期間)は短いほど復職しやすいのが一般的です。ライフイベントなどで一度離れる場合も、完全に現場から離れきる前に、パートや外来、単発・派遣で「細く長く」つながっておくと、フルタイム復帰のハードルが下がります。働き方の選択肢は 看護師の働き方とお金 で確認できます。

まとめ

  • 看護師の主な転職理由は人間関係・給与や待遇・労働環境(夜勤・残業)・ライフイベント。キャリアアップや心身の負担、看護観の不一致も。多くは複数が重なって「辞めたい」になる
  • 順位そのものより、自分の不満の正体(給与か/人間関係か/環境か)を分解することが出発点
  • 後悔しない転職は5ステップ=①理由の整理 → ②現職で解決できないか → ③在職中に動く → ④手取りで比較 → ⑤納得して決める
  • 給与が理由なら、額面ではなく手取り+夜勤構成+賞与で複数の求人を比較する。「年収は上がったのに手取りは下がった」を避ける
  • やりがちな失敗は感情的な勢い退職・年収だけで決める・1社だけで決める・ブランクの放置。在職中に動き、複数を比べることで回避できる
  • ライフイベントによる転職は「続けるための調整」。退職一択ではなく、異動・時短・夜勤免除も検討する

転職は、人生をやり直す手段ではなく、今の不満を解決するための一つの選択肢です。だからこそ、辞める前に理由を整理し、在職中に手取りで比較し、納得してから動く。この順番を守るだけで、後悔の多くは防げます。迷ったら 看護師の年収診断転職の手取り比較ツール で数字を出し、転職サイトの選び方職種別の年収と手取り看護師の働き方とお金 もあわせて、自分が納得できる一歩を選んでください。


本記事は2026年時点の一般的な情報です。本文中の転職理由の傾向や割合のイメージは、現場でよく聞かれる声をもとにした一般的な目安であり、特定の公的調査による確定順位ではありません。給与・賞与・夜勤手当の水準は地域・施設・経験年数によって大きく異なります。社会保険・住民税・退職手続きの詳細は、日本年金機構・全国健康保険協会・お住まいの自治体・勤務先の人事担当の公式情報でご確認ください。本記事は転職・労務・税務の助言ではありません。最終的な判断はご自身の責任で、必要に応じて専門家・公式情報をご確認ください。

監修・運営:黒田 律(くろだ りつ)

内科医・産業医(医師8年目)/投資家

地方の病院で内科診療を続けながら、産業医として「働く人の心身とお金」に向き合う医師。記事は税・制度などを公的な一次情報で確認し、医療・制度面を監修しています。運営者・編集方針について →