NISA口座と特定口座の違い
どこで投資すれば得か
前回の記事で、投資の基本と「インデックスファンドの積立」が初心者に向いていることを解説しました。では、実際に投資信託を買うにはどの「口座」を使えばいいのか。
証券会社で口座を開くと、「NISA口座」「特定口座」「一般口座」の3種類が出てきます。名前は似ていますが、税金の扱いがまったく違います。ここを間違えると、数十万円単位で損をすることも。
この記事では、3つの口座の違いと「どう使い分けるか」を、できるだけシンプルに解説します。
3種類の口座の違いを理解し、「まずNISA → 超えたら特定口座」の基本戦略を自信を持って選べるようになること。
投資の利益にかかる税金
口座の違いを理解するために、まず「投資で利益が出たらどうなるか」を知っておきましょう。
投資信託や株式を売って利益が出た場合、その利益(譲渡益)と配当金・分配金には約20%の税金がかかります。
所得税15.315%+住民税5% = 合計20.315%
100万円の利益が出たら、約20万円が税金で引かれます。
この「約20%の税金」をどう扱うかが、口座の種類によって変わるのです。
3つの口座の違い
| NISA口座 | 特定口座 (源泉徴収あり) | 特定口座 (源泉徴収なし) | 一般口座 | |
|---|---|---|---|---|
| 税金 | 非課税 | 約20%(自動天引き) | 約20%(自分で確定申告) | 約20%(自分で確定申告) |
| 確定申告 | 不要 | 原則不要 | 利益20万円超で必要 | 必要 |
| 年間投資枠 | 360万円 | 上限なし | 上限なし | 上限なし |
| 非課税保有限度 | 1,800万円 | なし(課税) | なし(課税) | なし(課税) |
| おすすめ度 | ★★★ | ★★☆ | ★☆☆ | ☆☆☆ |
NISA口座:利益がまるごと非課税
NISAは国が用意した「投資の利益に税金がかからない特別な口座」です。2024年から始まった新NISAでは、非課税で保有できる上限が1,800万円に大幅に拡大されました。
新NISAの2つの枠
| つみたて投資枠 | 成長投資枠 | |
|---|---|---|
| 年間投資上限 | 120万円 | 240万円 |
| 対象商品 | 金融庁が選んだ投資信託 | 株式・投資信託(幅広い) |
| 向いている人 | コツコツ積立したい初心者 | まとまった資金がある人 |
2つの枠は併用可能。合計で年間最大360万円、生涯で1,800万円(うち成長投資枠は1,200万円まで)を非課税で運用できます。
非課税の威力を数字で見る
毎月3万円を年利5%で20年間積み立てた場合:
- 元本:720万円
- 運用益:約513万円
- 課税口座なら税金:513万 × 20.315% ≒ 約104万円
- NISA口座なら税金:0円
同じ投資をしても、口座の選び方だけで100万円以上の差がつきます。
新NISAでは、売却した分の非課税枠(取得価額ベース)が翌年に再利用できます。教育資金やライフイベントで一部を取り崩しても、その後また枠を使えるのが大きな特徴です。
特定口座(源泉徴収あり):NISAの次に使う口座
NISA枠(年間360万円・生涯1,800万円)を使い切った場合や、NISA対象外の商品を買いたい場合は特定口座(源泉徴収あり)を使います。
「源泉徴収あり」を選ぶ理由
利益が出るたびに証券会社が自動的に約20%の税金を差し引いて納税してくれます。自分で確定申告をする必要がありません。
医療職は本業が忙しいので、確定申告の手間がゼロになる「源泉徴収あり」が圧倒的におすすめです。
「源泉徴収なし」の特定口座や一般口座では、年間の投資利益が20万円を超えると自分で確定申告が必要になります。計算も面倒で、申告漏れのリスクもあります。特別な理由がない限り、「源泉徴収あり」を選びましょう。
源泉徴収ありでも確定申告したほうが得なケース
原則不要ですが、確定申告すると得になるケースもあります。
- 年間で損失が出た場合:他の口座の利益と「損益通算」できる。さらに3年間の損失繰越が可能
- 配当控除を受けたい場合:課税所得が330万円以下なら、確定申告で配当の税負担を下げられる可能性あり
- 外国税額控除:外国株の配当に二重課税されている分を取り戻せる
ただし、確定申告すると合計所得が増えるため、ふるさと納税の上限計算や、扶養判定に影響する場合があります。迷ったら「しない」がシンプルです。
結局どう使い分ける?——フローチャート
投資口座の使い分けは、実はとてもシンプルです。
- まずNISA口座で投資する(つみたて投資枠 → 月10万円まで自動積立)
- 年間360万円を超える投資余力があるなら → 特定口座(源泉徴収あり)
- 生涯の非課税枠1,800万円を使い切ったら → 特定口座に移行
ほとんどの医療職は、NISA口座だけで十分です。月3万円の積立なら、年間36万円。1,800万円の枠を使い切るには50年かかります。
SBI証券や楽天証券などのネット証券は、口座開設・維持費が無料で、インデックスファンドの品揃えも手数料も銀行の窓口より圧倒的に有利です。スマホから10分で申し込めます。NISA口座は1人1口座なので、どの証券会社にするかは最初に選ぶ必要があります。
医療職が口座選びで迷いがちなポイント
「職場の財形貯蓄」とNISAは別物
病院によっては「財形貯蓄」制度がありますが、これは給与天引きの積立預金であり、投資ではありません。利率は預金並みなので、インフレ対策としてはNISAの積立投資のほうが有利です。財形はあくまで「強制貯蓄の仕組み」として割り切りましょう。
「企業型DC」がある人のiDeCoとの併用
大規模病院で企業型確定拠出年金(企業型DC)に加入している場合でも、2022年の法改正でiDeCoとの併用が原則可能になりました。口座の種類が多くて混乱しますが、優先順位は:NISA → iDeCo → 特定口座 の順です(→ NISA・iDeCoの記事で詳しく)。
まとめ
- 投資の利益には約20%の税金がかかる。口座選びでこれがゼロになる。
- NISA口座:利益が非課税。年360万円・生涯1,800万円まで。最優先で使う。
- 特定口座(源泉徴収あり):NISA枠を超えた分はここ。確定申告不要。
- 一般口座や源泉徴収なしは、特別な理由がない限り使わない。
- ほとんどの医療職はNISA口座だけで十分。
- 口座開設はネット証券(SBI証券・楽天証券など)がベスト。
口座の違いがわかったら、あとは実際にいくら積み立てるかを決めるだけ。医療職の収入に合った積立金額の考え方は、次の記事で解説しています。
→ 実践編:医療職のNISA・iDeCo入門|手取りからいくら積み立てる?
本記事は2026年(令和8年)の制度にもとづく一般的な情報です。NISA制度の詳細は金融庁「NISAのページ」をご参照ください。本記事は投資・税務の助言ではありません。