医療と制度

診療報酬改定と医療職の給料
2026年改定で賃上げはどうなる?

2026年6月4日 更新 / メディカルマネー編集部 / 監修:黒田律(内科医・産業医)

「診療報酬改定」と聞くと、経営や算定の話で、自分の給料とは遠い——そう感じる医療職は多いと思います。でも実は、あなたの給与明細と、国が決める診療報酬は、しっかりつながっています

この記事では、診療報酬改定がなぜ医療職の給料に関係するのかを整理したうえで、2026年度(令和8年度)改定のポイントを、とくに「給料に効く部分」を中心にやさしく解説します。

この記事のゴール

診療報酬改定が自分の賃上げにどう関わるかを理解し、「自分の病院は賃上げの仕組みを使っているか」を確認する視点を持つこと。手取りへの実感は 手取りシミュレーター で確かめられます。

そもそも診療報酬とは

診療報酬は、病院・クリニック・薬局が保険診療で受け取る報酬の「単価」です。検査や処置、入院などにそれぞれ点数がつき、1点=10円で計算されます。患者さんの窓口負担(多くは3割)と、健康保険からの支払いを合わせたものが、医療機関の収入になります。

この点数や算定ルールを、国(厚生労働省・中央社会保険医療協議会=中医協)が原則2年に1度、偶数年に見直すのが診療報酬改定です。つまり改定は、病院の「売上の単価」が変わるイベント。病院の収入が変われば、そこで働く人の賞与や昇給の原資にも影響します。これが、改定と給料がつながる理由です。

2026年度改定のポイント

2026年度(令和8年度)の改定では、診療報酬本体の改定率がプラス3.09%と、約30年ぶりに3%を超える高い水準になりました。薬価等は引き下げ(マイナス0.87%)となりましたが、本体の大幅プラスが柱です。施行は、薬価が2026年4月、本体が2026年6月1日からとされています。

そしてこの改定の最大のテーマが、医療従事者の賃上げと医療DXの推進です。本体プラス3.09%のうち、半分以上が賃上げと物価高への対応に充てられると説明されています。背景には、「医療分野の賃上げが全産業の水準から離れつつある」という国の危機感があります。

給料に直結する「ベースアップ評価料」

給料の話で最も重要なのが、2024年度改定で新設されたベースアップ評価料です。これは、病院や診療所が一定以上の賃上げ計画を届け出ると、初診料・再診料や入院基本料に加算が受けられる仕組みで、その加算分は全額を、看護師・技師・薬剤師などの給与アップに充てることが義務づけられています

2026年度改定では、このベースアップ評価料が拡充されました。届出手続きを簡素化しつつ、点数を引き上げ、対象も「当該医療機関に勤務する職員」へと広げる方向です。具体的には、外来・在宅ベースアップ評価料(I)が初診時で6点から17点へ引き上げられ、入院ベースアップ評価料は最大250点まで引き上げられます。これにより、看護師だけでなく、リハビリ職・薬剤師・技師を含むコメディカル全体の処遇改善が後押しされることが期待されています。

物価対応料の新設・基本診療料の引き上げ

物価高に対応するため、物価対応料も新たに設けられました。また、経営環境の悪化を踏まえ、基本となる診療料も引き上げられています。たとえば再診料は75点から76点へ、入院基本料では急性期一般入院料1が1,688点から1,874点へと引き上げられました(初診料291点は据え置き)。病院に手厚く配分されているのが今回の特徴です。

医療DX(AI・ロボットなど)の評価

AI診断支援やロボット手術支援など、医療の高度化につながる技術への評価も検討されています。画像診断のAI読影補助や、遠隔ICUなどが例として挙がっています。働く側にとっては、こうした技術の導入が業務のあり方を変えていく流れの一部といえます。

!改定=自動で昇給、ではない

大事な注意点です。診療報酬が上がっても、それが自動的に給料へ反映されるわけではありません。ベースアップ評価料は、病院が施設基準を届け出て算定して、初めて賃上げの原資になります。実際に賞与や基本給に反映されるかは、勤務先の対応しだいです。だからこそ、「自分の病院はベースアップ評価料を算定しているか」を知ることに意味があります。

患者としての負担も少し変わる

改定は支払う側にも影響します。物価高への対応として、入院時の食費が1食あたり40円、療養病床の光熱水費が60円引き上げられます。医療職自身も患者になることはありますし、患者さんから質問される場面もあるので、知っておくとよいポイントです。

医療職として、どう受け止めるか

2026年度改定は、「医療従事者の賃上げ」を正面に掲げた改定です。流れとしては追い風ですが、恩恵が自分に届くかは勤務先しだい。次の3点を確認してみてください。

  1. 自分の病院はベースアップ評価料を算定しているか:給与規程や労使の説明、給与明細の手当項目を確認。
  2. 賃上げが基本給に乗るのか、手当なのか:基本給に乗ると、賞与や退職金にも効きます(→ 基本給の重要性)。
  3. 手取りでどれだけ増えるか:額面の昇給は、社会保険料・税金が引かれて手取りになります。
手取りシミュレーター昇給したときに、手取りでいくら増えるのか。改定前後の額面を入れて、実際に手元に残る差を確かめられます。
計算する →

まとめ

  • 診療報酬は病院の「売上の単価」。改定で病院収入が変わり、賞与・昇給の原資に影響する。
  • 2026年度改定は本体プラス3.09%で約30年ぶりの高水準。半分以上が賃上げ・物価対応。
  • ベースアップ評価料の加算は全額が職員の給与に充当義務。2026年度に拡充。
  • ただし、病院が算定して初めて賃上げの原資になる(自動昇給ではない)。
  • 自分の病院の算定状況と、手取りでの増え方を確認するのが現実的。

制度の動きは、知っているだけで「自分の給料がなぜ動くのか」が見えてきます。あとは、昇給が手取りでいくらになるのかを 手取りシミュレーター で確かめてみてください。


本記事は2026年度(令和8年度)診療報酬改定の公表情報(厚生労働省・中央社会保険医療協議会)にもとづく、2026年6月時点の一般的な情報です。点数・施行日・算定要件は今後の通知等で変わる可能性があるため、最新情報は厚生労働省の公式発表をご確認ください。本記事は税務・投資・経営の助言ではありません。

監修・運営:黒田 律(くろだ りつ)

内科医・産業医(医師8年目)/投資家

地方の病院で内科診療を続けながら、産業医として「働く人の心身とお金」に向き合う医師。記事は税・制度などを公的な一次情報で確認し、医療・制度面を監修しています。運営者・編集方針について →